光学顕微鏡法によるアスベスト分析の現状と課題  http://jsmcwm.or.jp/wastest/2008_toronkai_4.pdf
 小坂 浩氏による。スライド41枚(2008年)。廃棄物資源循環学会の中のページ。


●(大気環境中アスベスト濃度測定における) PCM法の精度向上のために検討すべき事項

●電子顕微鏡による計数ルール
TEM

SEM

クロスチェックについて
目的或いは効果

これまでのクロスチェックの問題点

繊維密度がPCM計数値に及ぼす影響

透明化処理による繊維の移動の検証(1)

透明化処理による繊維の移動の検証(2)

SEMとPCMとの計数値比較の一例(単位:本/L)

分散染色法の原理

小坂(2008)による『光学顕微鏡法によるアスベスト分析の現状と課題』から

加法混色

分散染色法は大気サンプルに応用出来るか?
サンプル作製法

  1. 吸引ビン中でクリソタイルを発じんさせフィルターに捕集

    フィルターをスライド上で透明化後低温灰化
  2. アスベストを水分散させフィルターにろ過

    フィルターをスライド上で透明化後低温灰化
  3. アスベストを水分散させ懸濁液を一滴スライド上に滴下して乾燥させる

空気分散クリソタイル

水分散クリソタイル(ろ過後低温灰化)

水分散アモサイト(スライド上で乾燥)

クリソタイルSEM像(試料を80゜傾斜)

SEM像と位相差像との対比

分散染色像全体(細い繊維は発色しない)

分散染色像 前図の□内の拡大

SEM像と位相差像との対比(アモサイト その1)

分散染色像(アモサイトその1) 分散染色用浸液の屈折率:1.69

分散染色像(アモサイトその1) (アナライザ使用。色合いの変化は繊維が複屈折性を持つことを示す)

SEM像と位相差像との対比(アモサイト その2)

分散染色像(アモサイトその2)

アスベスト繊維が発色しない理由
スライドガラスと繊維の密着状態が影響すると考えられる。
観察結果との整合性:

PCM:その限界と適用範囲
限界:「分解能」、「形態観察のみ」
利点:「簡便・迅速」(on-site分析も可)、「低価格」、「リスク評価の基礎データ」

PCMの適用範囲:繊維径の分布が極端に細いものに偏っていなければ飛散監視等に使えるのではないか?

漏えいクロシドライトの繊維サイズ 計測した繊維数:281本、径が>1μmの繊維数:20本(7%)

観察対象物質によって使い分けが必要な対物レンズ

PCM対物レンズの違いによるコントラストの差

アスベスト繊維の計数ルール
「繊維」の定義の由来

 英国のアスベスト企業が設立したAsbestosis Research Councilが作業環境測定データの統一のために幾何学的定義を定める(1958)。アスペクト比「>3:1」に科学的根拠はない。
幾何学的定義の適用範囲
 作業環境測定に適用する合理的根拠はある。
 アスベストの存在が不明な条件下での適用はどうか?
  一般環境、解体工事現場、室内環境、産廃処理施設周辺、溶融処理後の無害化確認etc

アスベストと非アスベストの分別計数
WHOの気中濃度測定法(1997)

 PLM・電顕を使った分別計数を認める。(計数は熟練分析者が行なうことという但し書き付き)
英国のMDHS 87
 「PCMによる繊維数計数」と「PLM・蛍光顕微鏡・電顕を使ったアスベスト繊維の分別」の組み合わせ
米国ASTMのDiscriminatory Counting
 PCMとTEMによる段階的分析法

アスベストとへき開粒子

アモサイトの断面(SEM像)

アスベストとへき開粒子の分別に有効な偏光顕微鏡

へき開トレモライト(単結晶)

偏光顕微鏡による多色性(Pleocroism)の観察 クロシドライトとアモサイトの判別が可能

海外での光学顕微鏡法の精度管理

Relocatable Slideと「合意基準」

グレイティクルの比較

クロスチェック成績評価シートの一例 (Relocatable Slideを使ったNIOSH-AIHAのクロスチェック試験プロジェクトで使われている)

クロスチェック結果の国際比較(2006年)  (仮に Score60点以上をproficient(熟練者)とする)

アモサイトに比べるとクリソタイルは日・加どちらの国の分析者も成績が悪く計数が難しいことがわかる。


●まとめ

  1. 光学顕微鏡法(PCM)の簡便性・迅速性はアスベスト分析に有効である。
  2. PCMの限界を補う他の手法を組み合わせた重層的分析手法が開発され発展しつつある。
  3. PLMは「へき開粒子」や「角閃石粒子(ホルンブレンド等)」とアスベストを分別出来る。
  4. 電顕の活用法(光顕との使い分け・光顕の補完等)の検討が必要である。
  5. 光顕法には精度管理システムの確立が必須である。(系統誤差の最小化)


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