田中(1994)による〔『二酸化炭素問題を考える』(16-19p)から〕


二酸化炭素の地球温暖化効果−その虚と実をめぐって

はじめに
1.温室効果とは
2.大気中の二酸化炭素濃度の増加による温室効果のシミュレーションの問題点
 2.1. 温室効果による気温上昇のシミュレーションの問題点
 2.2. 二酸化炭素の吸収源の行方

3.温暖化現象のほかの要因
 3.1. ほかの温室効果ガスの影響

 「温室効果」とは、地球放射の赤外線の吸収に基づく地球表面温度の保温効果であり、大気中の二酸化炭素や水蒸気ばかりではなく、地球放射の赤外線を吸収するものであれば二酸化炭素と同様な「温室効果」を有することになる。表2には、二酸化炭素や水蒸気と同様に地球放射の赤外線を吸収する大気中のガス成分、すなわち、「温室効果」ガスについてまとめて示した。クロロフルオロカーボン(フロン)、亜酸化窒素、メタン、オゾンなどが主なものであり、これらのガス成分は、大気中の二酸化炭素濃度と比較してかなり低い濃度ではあるが、例えば、一分子当たりで比較すると、フロン11やフロン12による「温室効果」は二酸化炭素の1万倍に相当するといわれている。
表2 温室効果気体とその大気中の平均濃度3)

気体名(通称)

濃度体積比

変化傾向

寿命(年)

体積比/年

%/年
二酸化炭素(CO2 348ppmv 1.6〜1.9ppmv 0.45〜0.55  
フロン(CCl3F) 240pptv 9.5pptv 4.0 110
フロン12(CCl2F2 415pptv 16.5pptv 4.0 75
一酸化ニ窒素(N2O) 307ppbv 0.6〜0.7ppbv 0.2 150
メタン(CH4 1,680ppbv 12〜16ppbv 0.7〜1.0 10
一酸化炭素(CO) 90ppbv  

北半球 約1
南半球 約0

0.2
オゾン(O3 約20ppbv  

北半球 約1
南半球 約0

 
フロン113(CCl2FCClF2 50pptv 約6pptv 10〜20 90
メチルクロロフォルム(CH3CCl3 115pptv 約4pptv 約4以下 6〜7
四塩化炭素(CCl4 105pptv 約1pptv 約1 約30
表中、二酸化炭素〜オゾンについては、「Scientific Assessment of Stratospheric Ozone:1989」(WMO/UNEP、1989)より抜粋、フロン113〜四塩化炭素については、巻出(1990)による。
* 濃度体積比の単位 ppmv、ppbv、pptvは、それぞれ、100万分の1、10億分の1、1兆分の1を示す。

 図5(略)に、地球放射の赤外線の大気中の二酸化炭素や水蒸気による吸収スペクトルを示した。図から明らかなように、8,000nmと13,000nmの間には二酸化炭素および水蒸気による赤外線の吸収がなく、この波長の範囲で地球放射の赤外線が吸収を免れ宇宙へ出て行くことが可能である。そこで、この地球放射の赤外線波長の領域を“大気の窓”とよんでいる。しかしながら、フロン11やフロン12などの二酸化炭素以外の「温室効果」ガスには、この“大気の窓”の赤外線波長の領域において強い吸収があり、従来では、宇宙へ出ていった地球放射の赤外線を吸収する働きがあるのは問題である。そして、表2に示されるように、二酸化炭素と比較して、これらの「温室効果」ガスの大気中濃度の年増加率がかなり大きいことも問題である。
 IPPC:Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)の1990年の報告書によれば、各ガス成分「温室効果」への寄与率は、二酸化炭素が55%、フロン11およびフロン12が17%、メタンが15%、亜酸化窒素が6%、そのほかのフロン類が7%と報告している6)。したがって、地球の温暖化に対する二酸化炭素以外のこれらの「温室効果」ガスの寄与は、二酸化炭素のそれにほぼ匹敵しており、温暖化問題を議論する場合に、二酸化炭素のみを考慮するのは誤りであり、これらの「温室効果」ガスについても当然のことながら注目していかなければならない。』

 3.2. 大気中粉塵(微粒子)の影響
 3.3. 冷却効果ガスの影響
 3.4. 地球自身の気候変動サイクルの影響
結論
文献

『(関係分のみ)
3) 気象庁(編):温室効果気体の増加に伴う気候変化(U)、大蔵省印刷局(1990)
6) 気象庁(編):「気候変動に関する政府間パネル(IPCC):科学的評価」、1990年報告書・1992年補遺概要、日本気象協会(1993)』


討論