Abstract
『1.はじめに
このシンポジウムで、筆者に与えられた「風化過程におけるロックコントロール」というテーマを以下のように解釈した。風化過程におけるロックコントロールとは、「風化に対する地形構成物質(landform
materials)の抵抗性(resistance)、または風化しやすさ(sensitivity or susceptibility)の差異」であり、換言すると、「どのような岩石が、どのような風化(風化プロセス)で、どのような速度(風化速度)で、どのように風化していくのか(物性変化および風化生成物)?」ということになる。したがって、筆者はこの問いに対する答え(一般解)を用意しなければならないと考えた。
ところで、地球上に存在する岩石の種類やそれを取り囲む風化環境はきわめて多様性に富んでおり、しかも風化のプロセスもまた多様で複雑である。このような風化過程に関する研究は、以前から、墓石の風化の程度を調べたり、熱風化や凍結破砕などの各種の室内実験や野外観測などを通して数多く行われてきた。特に、Yatsu(1966、1971)によって、地形学において岩石物性を定量的に計測する重要性が指摘されて以降、岩石物性の計測を伴った「風化過程」に関する研究は飛躍的に進展しつつある。その背景には、岩石物性の計測機器のめざましい発達によって、よりミクロで精密な分析、より定量的な物性把握などが可能になったことがある。そして、これらの成果は、Carroll(1970)、Winkler(1975)、Embleton
and Thornes(1979、pp.73-129)、Selby(1982、pp.1-44)、Wilson(1983)、Goudie
and Pye(1983)、Chorley et al.(1984、pp.203-229)、Ollier(1984)、Birkeland(1984)、Colman
and Dethier(1986)、Gerrard(1988、pp.107-169)、Yatsu(1988)、Cooke
and Doornkamp(1990、pp.316-345)などの教科書や成書、あるいは、Whalley
and McGreevy(1983、1987、1988)、McGreevy and Whalley(1984)、Matsukura(1989)などのレビュー論文などにまとめられてきた。
このように、風化に関して莫大な数の研究があるにもかかわらず、現在の研究レベルにおいては、前述の問題設定に対する答え、すなわち、「岩石の風化に対する抵抗性についての一般解」を導くのはきわめて難しいようである。したがって、本稿では、少し視点を変えて、ロックコントロール(地形材料学)の立場からみた風化研究に関する若干のレビューと、地形学における風化研究の今後の課題についての筆者の考えを述べることにする。』
2.風化研究の重要性
3.風化研究の最近の動向
3.1. 風化プロセスの研究
3.2. 風化生成物および物性変化に関する研究
3.3. 風化速度に関する研究
(1)化学的溶出(削剥)速度(Chemical denudation rate)
(2)風化生成物の形成速度
(3)岩石物性の変化の速度
(4)風化プラス削剥の速度
3.4. 風化研究の進展
4.風化研究における今後の課題
5.おわりに
『引用文献(関係分のみ)
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』