Abstract
T.はじめに
U.天文学的アプローチ
1)宇宙空間の有機物
2)地球外生命の探査
3)テクノロジー文明の分類
4)フェルミのパラドックス
5)パンスパーミア説
V.惑星科学的アプローチ
1)惑星探査
2)生命発生の条件
W.隕石学的アプローチ
1)隕石中の有機物
2)火星起源隕石
3)火星起源隕石からの「生命化石」発見:McKay et al.(1996a)論文
4)火星生命に関する議論
X.地質学的アプローチ
1)化石の認定
『2) 最古の生物化石
古い生物は、古い岩石に含まれる。古い岩石の集まっている地塊をクラトン(craton)という。図1(略)にクラトンの分布と最古の証拠をまとめた。岩石は時代が遡るほど、その分布や多様性は減っていく。それは地球表層が常に更新されているからである。
最古の鉱物は西オーストラリアの42.76億年前(Froude et al., 1983)の砕屑性ジルコン(zircon)で、最古の岩石は約40億年前(Bowring
et al., 1989)のカナダ北西準州のアカスタ片麻岩で、最古の堆積岩はグリーンランドIsua地方の38億年前(McGregor,
1973)のものである。
初期の生物は海洋で発生したと考えられる。生物の化石は海洋で生成された堆積岩中に含まれているはずである。生物は有機物を材料としているため、変成岩からは生物の痕跡を発見するのは困難になる。生物の起源を探るには、変成作用を受けていない堆積岩が良い材料となる。最古の生物は、最古の堆積岩から発見されるはずという考えでいくつかの試みがなされてきた(下山、1995)。
1979年に地球最古の堆積岩から、Isuasphaeraというイースト菌状の微化石が記載された(Pflug and
Jaeschke-Boyer, 1979)。グラファイトの炭素同位体組成(δ13CPDB)からも、生物起源であるとされた(Schidolowsk
et al., 1979)。しかし、その化石とされたものは、後に液体包有物であることが判明した(Bridgwater
et al., 1981)。
グリーンランドIsua地方の38億年前の縞状鉄鉱層(banded iron formation:BIFと略される)と近くのAkikia島にある38.5億年前のBIFに含まれるリン灰石(apatite)中の炭素質包有物(Mojzsis
et al., 1996)や、37.79億年前のタービダイトと深海底堆積物(Rosing, 1999)の炭素同位体組成から、生物活動によるものとされた。BIFは海水中のFeを酸化させ沈殿したものであるが、遊離酸素のない時代なので、鉄細菌による産物の可能性が指摘されている(川上・熊澤、1995)。このような報告に対しては疑問の声も上がっている(Holland,
1997)が、その真偽の判定はまだ着いてない。
多くの研究者に認知されている最初の化石は、35億年前頃のものである。この化石は、オーストラリアのMarble Barに分布するWarrawoona層群Towers層Apec
chertから発見された(Schopf, 1993)。地層の年代は34.70億年前より古い。産出した化石は、繊維状と球状の形態で、0.5〜19.5μmで平均5.0μmである。化石の根拠は、形態の類似性と、炭素同位体組成である。
Schopfは、シアノバクテリアと同定し、ストロマトライトを形成していたと考えた。最古の化石がシアノバクテリアであれば、35億年前にすでに光合成をおこなう生物がいたことになる。生命誕生は35億年前より遡ることになる。しかし、ストロマトライト説に対して、周辺の地質などの証拠から、中央海嶺での熱水循環堆積物の可能性が指摘されている(磯崎ほか、1995;磯崎・山岸、1998)。また、シアノバクテリア説に対し、深海熱水噴出口付近で見られるイオウ酸化細菌の可能性が指摘されている(上野、1998)。
もし35億年前のストロマトライトが無機的なものであるとすれば、27億年前の西オーストラリアFortescue Groupのストロマトライトが最古のものとなる。
南アフリカのBarberton地方で、34億年前のグリーンストーン帯の中から、バクテリアの証拠が発見された(Ohmoto
et al., 1993)。硫化鉄(pyrite)のイオウ同位体組成が、バクテリアが海水中の硫化物を還元してできるような値であることが示された。Ohmotoらは、量は少ないが、多少の遊離酸素があったとしている。
南アフリカSwaziland地方、Fig Tree累層Swartkoppie層のチャート(32億年前)から藻類の微化石が発見されている(Knoll
and Barghoon, 1977)。化石は数μmの球状で、現世のシアノバクテリアの分裂段階に相当するものが発見されている。
真核生物の出現は、化石では21億年前(Han and Runnerger, 1992)、分子時計では18億年前(Doolittle
et al., 1989)、有機分子化石(ステラン)では17億年前(Summons et al., 1988)である。この頃には、遊離酸素が、海水中Fe2+を消費し尽くし、大気中に蓄積される。シアノバクテリアの光合成系(葉緑体)や、好気性細菌の酸素呼吸システム(ミトコンドリア)が共生して真核細胞が誕生した。35〜32億年前には、化石と認知されるような生物が繁栄していたことになる。したがって、生命の出現は、さらに前の時代に遡ることは確かである。』
Y.合成実験的アプローチ
1)材料の合成
2)細胞膜の形成
3)自己複製
Z.地球生物学的アプローチ
1)地球生命とは
2)生命の種類
3)地球生物の進化
[.まとめ
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