田中・竹内(1997)による〔『地球の大気と環境』(16-17p)から〕


地球のエネルギー収支と表面温度
 地球表面の温度はエネルギーの流入と流出のバランスで決まる。ここでは地球全体を平均化した簡単なエネルギー収支から地表温度を計算してみよう。
 大気圏外で太陽に正対する単位面積が、単位時間当たりに受ける太陽エネルギーを太陽定数(So=1.37kW/m2)という。このうち、地表面による太陽光の反射分を差し引いて、地球の投影面積を掛けると地球が受け取る太陽エネルギーが求められる。地表付近に流入するエネルギーには地熱や化石燃料燃焼といった人間活動に基づくものもあるが、現在のところ太陽エネルギー(1.78×1017W)が非常に大きいため無視できる(地熱 3.2×1013W、化石燃料の燃焼 1×1013W)。したがって、地球表面への全流入エネルギーEinは
   Ein=π・R2・So・(1−A)     (1)
となる。ここで、R、Aはそれぞれ、地球半径、太陽光に対する反射率(アルベド、約0.3)である。一方、地球からのエネルギー流出(Eout)は地球放射のみと考えてよい。シュテファン−ボルツマンの法則によれば、物体からの放射エネルギーは温度の4乗に比例する
   Eout=4π・R2・ε・σ・Ts4     (2)
ここで、Ts、σ、εはそれぞれ、地表の平均温度(K)、シュテファン−ボルツマン定数(5.67×10-8W/m2/K4)、赤外線の地表面から宇宙空間への放出割合である。
 地表でのエネルギー収支は均衡している(Ein=Eout)ことから
   Ts4=So・(1−A)/(4ε・σ)     (3)
が得られる。地球に温室効果がない場合(ε=1.0)を仮定して、おのおのの数値を(3)式に代入すると、本文に示した平均温度Ts=255K(−18℃)が得られる。現実にはε=0.6程度であるので、Ts=289.7Kとなる。
 それでは、温室効果気体が増加してεが0.59に下がったら平均気温はどうなるであろうか。Ts=291.0Kとなり、平均温度は1.3K上昇することになる。簡略化した式でこれ以上の細かい数値を扱うのは意味がないが、地表の温度がエネルギーのバランスの上に成り立っていることが理解されよう。』