『8.断裂
断裂とは地質体中の破断面である。断裂には断層(図8.1:略)・裂か・節理がある。地すべりについては9章を参照されたい。
断層 破断面(断層面)にそって両側の地質体に変位が見られるもので、母岩の破砕と周辺に節理密集帯をともなうことがおおく、岩盤の強度・透水性(透気性)にあたえる影響が大きい。
節理 破断面(節理面)にそって地質体に変位がないか、あってもごくわずかなもの。分野によっては割れ目とよぶこともある。
裂か 破断面(裂か面)に直交する方向に変位が見られるものをいう。
8.1 断裂の分布と種類
断裂は応力が地質体の破壊強度を上回ったときに発生する。応力には圧縮応力と引張り応力がある。
圧縮応力 主として、プレートの衝突や沈み込み、重力などで発生する。
引張り応力 プレートの分離や、熱過程・乾燥収縮などで発生する。
応力と断層の関係 Anderson(1951)によると、水平方向に最大圧縮主応力が存在し、垂直方向の応力が最小の場合は逆断層となり、垂直方向の応力が最大の場合は正断層となる。また垂直方向の応力が中間の場合は横ずれ断層となる(図8.2:略)。
日本列島の断層 日本列島の断層分布と現在の応力場とはAnderson(1951)のしめした関係となっている(図8.1参照:略)。
東北地方はほぼ東西方向の圧縮応力場であり、最小主応力がおおむね垂直となり南北方向の走向をもつ逆断層を形成している。横手盆地東縁の千屋断層・北上低地西縁断層帯などはその例である。中部・近畿地方は東西方向の圧縮応力場であり、最小主応力がおおむね水平・南北方向となり、横ずれ断層を形成している。阿寺断層・跡津川断層などはその例である。九州地方は引張り応力場のためほぼ中央部に、別府−島原地溝などの正断層が見られる。』