(社)日本工学アカデミー・環境フォーラム(編著)(2004)による〔『豊かな石油時代が終わる 人類は何処へ行くのか』(132-134p)から〕
第2章 人類の遺産・地下水と農地をまもる(71-135p、大矢
暁 著)
『
- 日本の河川水・湖沼水・地下水が、農業や畜産業によって、富栄養化している実態を直視する必要がある。
- 硝酸性窒素汚染の実態把握が重要であることの理解を求める。
- 硝酸性窒素の汚染が健康に影響を与えるレベルに達している可能性に関し、より徹底した調査を進める必要がある。
- 日本の地下水は、大変汚染されていること、場所によっては、深刻なメトヘモグロビン血症を幼児に発生させる濃度にまで進んでいることについて、パブリックアウエアネスを広げることが必要である。
- 環境管理(環境省・自治体)、河川管理(国土交通省・自治体)、農政(農林水産省・自治体)、水道衛生管理(厚生労働省・自治体)などにまたがる統合的な調査研究と対応戦略の策定が必要である。国の機関は協同して自治体を支援し、自治体が中心になって進めるのが効果的と考える。
- 縦割り行政では、水環境問題の解決はむずかしい。このままでは、日本の水環境に関する改善は先送りされ、世界で最も後進国になってしまう。
- 結局、過剰な化学肥料・農薬の使用を強いられているのは農業従事者であり、知らないうちに汚染の原因者になっている。
- 流域全体として捉えることが重要である。市区町村といった行政区分は人間社会が勝手に作ったもの。地下水は行政単位を超えて流動している。流域全体の水循環を窒素を基準にして捉え、持続型農業・畜産業のシステムを開発・普及することが重要。
- これまでは、流末での力任せの浄化に頼ってきたが、発生源に立ち戻って汚染の低減に努力すべきである。
- 環境の基本はきれいな水にある。21世紀は水の時代。地下水の広域汚染に無関心できたことは社会的にも、経済的にも大きな問題である。
- 窒素化学肥料を作るには膨大な化石燃料が使われている。化石燃料の価格は将来の世界の需要供給の関係、石油生産がピークを迎えようとしていることなどから、ますます高くなっていくに違いない。その結果、窒素化学肥料の製造コストも高くなっていくと予想される。窒素化学肥料の使用量低減は、エネルギーの保全にもつながる重要な課題として捉える必要がある。
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