地球資源

福岡正人

1.はじめに

1−1.地球資源とは

 私たちが営む人間社会は、自然界から取り込んだモノ(物質)を必要としており、それらを加工して製品をつくり、さらにそれらのモノに伴なう不要な部分あるいは不用となった部分や製品を自然界に捨てることで成り立っています。あらゆるモノを動かすためにはエネルギーが必要ですので、モノの動きにはエネルギーが伴っていることを忘れてはなりません。

 人間社会に必要なモノは地球の自然界から取り込むことになりますので、最近はこれらのモノとエネルギーを総称して地球資源と呼ぶことがあります。これらに含まれる実際の主要な個別の資源は、従来から天然資源あるいは地下資源と呼ばれてきた資源と大きく重複していますし、呼び方の違いはたいした問題ではありません。

しかし、ここでは地球資源という呼び方を用い、大きく3つのグループに分けて説明することにします。1つめはエネルギー資源であり、エネルギー自体は必ずモノに付随しますし、これがなければ他のモノとしての資源を利用することもできません。2つめは鉱物資源です。モノの代表的資源です。3つめは、もう一つのモノ資源である生物資源です。先の天然資源は人間が関わらない資源の総称ですが、近年では3つめの生物資源の大部分は養殖や栽培などといった人間の関わりが大きいために、天然資源という呼び方は実態に沿わなくなっています。また、地下資源という呼び方は、今でも1つめのエネルギー資源と2つめの鉱物資源の大部分は地下から採取されていますので実態に合わないことはないのですが、3つめの生物資源は陸上あるいは水中にありますので不適です。という訳で、現在では人間の関与も認めたうえで、地球資源という呼び方が最も実態にあったまとめ方をするのに都合が良いのです。上記の3グループには収まらない資源として、水と土壌についてもここでは触れることにします。近年はとくにこれらの重要性が注目されてきています。

 

1−2.資源と環境の関係

 人間社会を中心にすると、地球の自然界つまり地球環境あるいは自然環境がその周りにある訳ですが、インプット側の物質とエネルギーを資源と呼び、アウトプット側の物質とエネルギーを廃棄物(ごみという用語はおもに家庭からの廃棄物を中心としたものに使われますが、固体・液体・気体のあらゆる不用なものは廃棄物と総称します。エネルギーにも使えますが、質の悪いエネルギーの形態は熱エネルギーですので、具体的には廃熱というものになりますが、物質に伴なうので廃熱水(気)の形が一般的でしょう。)と呼んでいます。資源側の問題としては枯渇を代表例とする利用しにくさの問題(配分の問題も含みます。近年は世界的には貧富の格差増大と連関して公平な配分ということが大きな問題となってきています。)がありますし、廃棄物側の問題としては有害廃棄物による人間社会の汚染つまりさまざまな地球環境問題(二酸化炭素を代表とする温暖化ガスの排出による地球温暖化問題、フロンガスなどによるオゾン層破壊問題、SOXNOXなどによる酸性雨、さらにさまざまな大気汚染・水/海洋汚染・土壌汚染など、そしてこれらが複合した生態系への影響による森林破壊および野生生物の絶滅危機や砂漠化など。)があります。つまり資源問題と環境問題は表裏の関係にあります。したがって、今後ますます悪化する環境問題に対処するためには、同時に資源問題も視野に入れて考えなければならない状況にあるということです。

 

1−3.枯渇性(非再生)資源と非枯渇性(再生可能)資源

 上記3グループの資源のうち、エネルギー資源と鉱物資源の主要なものは地下から採取される地下資源ですが、これらは原則的に一度使用すると二度とは使えない枯渇性資源(あるいは非再生資源または再生不可能資源)と言われることがあります。例えば、エネルギー資源の1つである石油は、燃焼させて使用すれば、おもに二酸化炭素と水に変化してしまいますので、二度とエネルギー源として使えません。鉄などの鉱物資源も、最近はリサイクルなどとしてその一部の再利用が行われていますが、基本的には枯渇性です(リサイクルのたびに質が劣化していくため)。一方、生物資源の多くは栽培や養殖という手段によって、繰り返しの利用が行われています。このような生物資源は非枯渇性資源(あるいは再生資源または再生可能資源)といえます。ただし、利用のしかたによっては繰り返すことが困難になる場合も増えてきましたし、生産量以上に消費することもできませんので、むしろ今まで非枯渇性といわれていたものから現実的な枯渇が発生する可能性があるかもしれません。

しかし、このような枯渇性資源について、どのくらい残されているのか、そしていつまで利用できるのかは、私たちにとって重要な関心事の1つです。どのくらい残されているかは、一般に埋蔵量ということばで表わされますが、資源の種類によって異なる定義が使われることもありますので、誤解を生じる場合があります。またいつまで利用できるのかについては、耐用年数(あるいは可採年数またはR/P)ということばで表わされますが、これも寿命と混同されやすく、混乱を招きやすい用語の1つと言えます。しかし、意味を正確に理解していれば、便利な用語であることには間違いありません。

 

2.おもな地球資源

2−1.おもな地球資源の分類

 ここで取り扱う資源は表1にまとめてあります。詳しくは私のホームページにインターネットなどから入手できる情報源をまとめていますので、参考にしてください。

地球資源論研究室:http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/

 

表1 おもな地球資源の分類

地球資源

エネルギー資源

化石燃料

石油、石炭、天然ガスなど

核燃料(原子力)

ウラン

水力

 

太陽

太陽熱、太陽光

バイオマス

黒液など(廃棄物)

その他

風力、地熱など

鉱物資源

金属鉱物資源

鉄、アルミニウム、銅、鉛、亜鉛など多数

非金属鉱物資源

石灰石など

生物資源

食糧

農業・漁業関連

森林

林業関連

水資源

 

 

土壌資源

 

 

 

2−2.耐用年数の定義

 枯渇性資源をいつまで利用できるかを示す指標としてよく使われるのが耐用年数(あるいは可採年数またはR/P)ですが、これは次の式で定義されます。

 耐用年数=ある年の確認可採埋蔵量/ある年の生産量

分子は、普通に埋蔵量と呼ばれる量ですが、ここに示すように地下のどこにどれ位の量が存在するかが探査などの調査によって確認されており、さらに現時点での採掘の技術力を含めて経済的に採掘可能な埋蔵量です。これは必要となればいつでも利用可能な状態になることがはっきりしているものです。分母は生産量ですが、資源の種類に応じて分母と分子の単位をそろえる必要がありますが、対象は世界全体でも地域でもかまいません。しかし、同じ年(あるいは年度)で比較する必要があります。英語では埋蔵量をReserve、生産量をProductと表現しますので、それぞれの頭文字をとってR/Pとも呼ぶ訳です。この耐用年数は例えば石油では40年くらいで、近年の間ではほとんど変化していません。つまり石油を消費して埋蔵量が減っても、新たな探査などで発見されれば埋蔵量は増え、耐用年数は減らないこともありえます。分母も分子もそれぞれ増減することがありますので、あと40年で石油が枯渇することを示しているわけではありません。つまり、単純に、寿命を表わしてはいないので、注意が必要です。では、寿命を予想するにはどうすればよいのでしょうか。

 

2−3.究極可採埋蔵量

今後どれだけ探査などを行ったとしても、これ以上は増えない埋蔵量を究極可採埋蔵量と呼びます。これは、いままでの生産量の合計である累計生産量(使用済みの総量)と確認可採埋蔵量に未確認埋蔵量を加えたものになります。問題の量は未確認埋蔵量ですが、慣例的に究極可採埋蔵量のほうを用います。この量は資源の種類毎にさまざまな方法で推定されていますが、石油の場合がとくによく知られています。石油の場合は、過去の探査などの実績を将来に外挿することで推測する方法と、石油は堆積盆に胚胎されるという成因論的な仮定により推測する方法がおもなものです。しかし、いずれにしても楽観的に見積るか、悲観的に見積るかで大きな差が生じ、問題となります。そうはいっても、この量を求めることができれば、耐用年数の定義における確認可採埋蔵量の代りに究極可採埋蔵量を使えば、寿命に相当する時間を決めることはできます

 

図1 究極可採埋蔵量、未確認埋蔵量、確認可採埋蔵量、累計生産量の関係

未確認埋蔵量

確認可採埋蔵量

累計生産量量

究極可採埋蔵量=累計生産量+

確認可採埋蔵量+未確認埋蔵量

 石油については、近年のオイル・ピーク論争で詳細な議論が行われています。

 

3.エネルギー資源

3−1.商用エネルギーと非商用エネルギー

 上記のように地下資源は枯渇性ですので、埋蔵量および耐用年数で比較することが多く、人間社会での利用の段階では生産量および消費量もよく使われます。これらが市場で取引される場合には、一般には統計データとして具体的な数字が入手可能です。ただし、戦略物資と見做された資源については情報を公開しない国々がありますので、信頼のおける数値を入手することは現在でも困難な場合が多いようです。

 薪や動物の糞などのような身近なモノを、エネルギー源として利用することは、現在でも開発途上国を中心に行われています。この場合、市場には出ませんので統計データは残りません。しかし、国によってはエネルギー資源の大部分を占めることもありますので、近年は国連などが積極的にデータ収集に力を入れていますが、このような資源を非商用エネルギーと呼んでいます。

 非商用エネルギー資源については、とくにデータが不足していますので正確な量は不明ですが、全エネルギー資源の1〜2割と国連関連では予想しています。

 

3−2.化石燃料

石油や石炭や天然ガスは過去の生物の組織が変化して作られたものと考えられていますので、生物の痕跡を意味する化石ということばで総称されます。

商用エネルギー資源の世界における消費量の内訳は、近年では、4:3:2:1(合計すると10割)=石油:石炭:天然ガス:(原子力+水力)でした。最近の地球温暖化問題に対する対策として、熱量当りの二酸化炭素排出量の少ない天然ガスの利用が促進されていますので、現在では3:2の部分は2.5:2.5に近づいていますが、その他はあまり変っていません。いずれにしても、全体の9割を化石燃料が占めています。非商用エネルギー分を考慮すれば7〜8割に下がりますが、それでも圧倒的に大部分を占めていることに変りはありません。

 

3−3.化石燃料と二酸化炭素

石油は炭化水素系の有機化合物が1,000種類以上も混ざったものと言われていますが、炭素と水素の原子比で表わすとC:H=1:2程度です。石炭は陸上で森林を形成した植物(とくに幹の部分)から変ったもので、やはり複雑な高分子からなる有機物の集合体ですが、C:H=1:1程度です。これらと違って、天然ガスの主体はメタンガス(CH4)であり、C:H=1:4です。したがって、これらをエネルギー源として使用する場合、つまり燃焼させて酸素と化合させると、天然ガスが最も二酸化炭素(CO2)/水(H2O)の比が小さくなり、これら3者間のクリーン度は天然ガス>石油>石炭となります。さらに、石炭は有害な物質を多く含むことから、埋蔵量は非常に多いのですが敬遠されつつあります。

各国から発生する二酸化炭素量の見積りは、これら化石燃料の消費量から計算により求められます。実際にはセメント(後述)消費量なども加味されますが、基本的には化石燃料の消費量で決まります。

 

3−4.モノ資源としてのエネルギー資源

 世界の商用エネルギー消費量の4割を占める石油は、非常に優れたエネルギー源であり、とくに運輸の面では不可欠の資源です。とくに空輸では代替資源は未だに存在しないといえます。そればかりか石油はプラスチック製品などを製造するための原料としても非常に大事で、モノ資源でもあります。全体の2割ほどが使われています。

 石炭もモノ資源として使われていますが、そのほとんどは製鉄用のコークスとしてですので、エネルギー資源およびモノ資源としての石油に代替できる資源は存在しません。これは資源の質の問題でもありますが、総合的に石油ほど優秀な資源は存在しないということです。

 

3−5.原子力と水力

 この両者で世界の商用エネルギー消費量の1割ほどを占めています。水力発電は世界的に限界に近いようです。原子力(核分裂を利用するもの)は核拡散と密接につながっており、政治的な要素が大きいし、何といっても放射性廃棄物の問題もあります。原料である核燃料はもっぱらウラニウム(質量数235のみ)が用いられていますが、それからの副産物であるプルトニウムを利用する努力もなされています。ウラニウムを多く含む鉱石は限られていますし、プルトニウムの本格的な利用技術は確立していません。したがって、原子力(核分裂)によって石油を代替することは、エネルギー量だけからしても不可能と考えられます。

 

3−6.クリーンなエネルギー資源

 近年は風力発電に力を入れている国が増えており、その他の自然エネルギーを利用する努力が、地球環境問題への対策も考えて多くの国々によってなされています。太陽の熱あるいは光を利用することも行われてきていますが、石油を代表とする化石燃料は比較的に安いし質が高いので、なかなか経済的に競争できる状況にはなっていません。

 バイオマスは生物ですので、燃焼させても吸収していた分の炭素しか放出しないと考えられていますので、二酸化炭素の排出量に算入されません。パルプ製造の廃棄物である黒液などは古くから利用されてきたものですが、最近はもっと積極的にさまざまなバイオマスを利用する技術開発が進められています。

 しかし、今のところこれらのクリーンなエネルギー源を全部あわせても、エネルギー消費量全体の数%程度にしかなっていません。今後、急激な利用増加の可能性は残されているものの、画期的な行政からの援助などが必要と思われます。

 

4.鉱物資源

4−.金属鉱物資源

 私たちの身の回りはさまざまな建築構造物や製品などであふれています。上記のような石油を原料とした有機物であるプラスチック製品もその一部ですが、鉄やアルミニウムを代表とするさまざまな金属類もたくさん使われています。

 金属類は自然界では不安定なため(大気中の酸素によって酸化されて酸化物になりやすいし、水があればその反応は進みやすくさらに水酸化物を形成しやすいため)、特別の環境以外では存在しません。一般に他の複数の元素と化学結合していて、もっと安定な状態で存在しています。私たちは、自然界に存在するさまざまな元素を、それらと化学結合している不用な元素を取り除いて、いったん純粋な金属の形に分離してから利用しています。このような鉱物資源を金属鉱物資源と総称し、単一の元素までは分離しないで利用するものは、非金属鉱物資源と総称しています。

 金属鉱物資源の中でもっとも消費量が多いのは鉄であり、2番目はアルミニウムです。3番目以降は桁違いに少なくなりますが、銅・鉛・亜鉛などが代表的なものです。自然界には、おおよそ、原子番号92番のウラニウムまで、80種以上の元素が存在していますが(92番以下でも半減期が非常に短い放射性のものがありますので、92種には達しないのです。また基本的にはウラニウムより重い元素は人工的な放射性元素ばかりです。)、私たちは大陸地殻に平均的に多く含まれている元素ほど多く利用しています。ただし、平均的な濃度では資源として利用することは経済的に無理ですので、自然界で平均以上に濃集している部分(この部分は異常な岩石であり、鉱石と呼ばれています。またこのような鉱石がとくに多い部分は鉱床と呼ばれます。)を探して、それらを採掘することによって利用しています。自然界では、鉄とアルミニウムの鉱石は酸化物または水酸化物が主体であり、その他は硫化物が主体となっています。これは、各元素の化学的性質と地殻における存在度によって制約されています。

 

4−2.金属鉱物資源の究極可採埋蔵量の推定法

 大陸地殻に含まれる元素の種類と量は詳しく推定されてきています。大陸地殻の平均の厚さは30kmを超えますが、将来にわたり私たちが地下資源を採掘できる深さは数kmでしょう。

さらに、鉱床と呼べる濃集部分の存在確率がわかれば、究極可採埋蔵量に匹敵する量を求めることができます。すでに立見辰雄さんがその存在確率について鉱化度という概念を作って具体的に検討しています。誤差範囲は大きいのですが、これらを参考にすれば、ほとんどの元素について当分の間は枯渇の心配はありません。

 

4−3.金属鉱物資源の品位と質と埋蔵量の関係

 例えば、アルミニウム(Al)は大陸地殻のなかで酸素とケイ素についで3番目に多い元素です。資源としては風化作用などで地表部分に濃集した酸化物/水酸化物の形態のものをおもに利用しています。もしこれらが利用しつくされたとしたらどうすればよいでしょうか。Alは普通の岩石中にも大量に存在します。したがって、これらを利用できれば無尽蔵に資源は残されていることになります。ただし、普通の岩石中ではAlは珪酸塩鉱物として存在するために、Alをこれと化合している他の元素から分離するのにさらに大きなエネルギーを必要とします。つまり品位の劣化だけでなく質の劣化が問題となりますが、必要であれば利用することは可能でしょう。この場合は埋蔵量も増えることになります。鉄の場合も同様です。

 しかし、これとは別の銅の例を考えてみましょう。銅は硫化物(おもにCuFeS2、黄銅鉱)を利用しています。重金属類は一般的に自然界では硫黄(S)と化合しやすく、珪酸塩鉱物を主体とする普通の岩石中に含まれることはほとんどありません。したがって硫化銅がなくなれば、おそらく簡単には他の形態の銅を入手できません。この場合には、リサイクルなどによる再利用ないしは同様の機能をもつ別金属の代替技術の開発が重要になります。大部分の希少金属(レアメタル)も銅と同じ運命にあります。

 

4−4.非金属鉱物資源

 この代表はセメント原料として大量に消費されている石灰石です(石灰石は鉱石名です。岩石名は石灰岩で、これは事実上単一の鉱物からなりその鉱物名は方解石(Calcite、カルサイト、化学組成CaCO3)です。石灰石を焼くとCaCO3CaOCO2の反応により、生石灰に変わります。ただし、このとき二酸化炭素が発生します。生石灰は水と反応しやすく、CaOH2OCa(OH)2のように消石灰に変わります。生石灰に粘土などのSiO2Al2O3成分などを加えて調製し、粉末状にしたものがセメントです。セメントに水および砂利などの骨材を加えてコンクリートにしますが、中に鉄筋を入れておけば鉄筋コンクリートの出来上がりです。

 ここで砂利などと書きましたが、砂利はある程度の大きさの粗粒の状態の岩石からなる資源の呼び名ですが、これらも非金属鉱物資源の一種です。ただしこれらを土石資源という場合もあります。

 また、非金属鉱物資源の多くは工業における原材料として用いられていますので、工業原料資源と呼ぶこともあります。

 

5.生物資源

5−1.食糧資源

 資源の3大グループの中で、もっとも身近なものはこの食糧資源かもしれません。毎日の食卓において、私たちはこれらを体内に摂取して、体の運動エネルギー源として利用しています。体にとってのエネルギー資源ともいえます。

 一般的には、農業における農作物と牧畜および漁業における水産物(陸水および海水)

として私たちはこれらの資源を入手していますが、農業では栽培と飼育が主体ですし、漁業も半分は養殖によっています。

 現在の世界人口は66億人強ですが、これらの食料資源は総量としては不足していないのですが、配分の問題のために入手できずに餓えている人々は2割近くに達します。

 

5−2.森林資源

 私たちは建造物などに多量の木材を利用し、またパルプを加工して大量の紙製品を消費しています。これらの原料は大規模な森林を形成する樹木です。とりわけ熱帯の開発途上国に分布する熱帯雨林(世界的には3地域あります:南アメリカ中部(アマゾン)、アフリカ中部、東南アジア)の樹木の消費が激しく、上記した地球環境問題を起こしています(また、植物の体を構成する主要な元素の一つは炭素であり、この炭素は植物が光合成により大気中の二酸化炭素を吸収したものです。いわば樹木は炭素の貯蔵庫であるため、これらが減少すれば、大気中の二酸化炭素も増え、温暖化が促進されると心配されています。)。これらの熱帯雨林には、現在の地球上の全生物種(全部で180万種くらい)の何倍もの種が生息していると予想されており、それらの貴重な生物の絶滅も危惧されています。

 

6.水資源

 私たち人類だけでなく、植物を代表とする生物にとっても淡水は必須です。淡水の過不足は年間の降水量と蒸発量の差によって決まります。世界平均の年間降水量は1mに近いのですが、雨水は河川水と地下水になって最終的に海洋へ戻ります。平均して河川水は1月足らず、そして地下水は600年位かけて戻ります。とくに国境の多い大陸では河川は国境を横断して流れますので、取水の競争によって国間の紛争が生じていますし、使用された地下水は簡単には復元しません。したがって、21世紀は水資源が不足し、これが国際紛争の火種になると予想する専門家は大勢います。

 

7.土壌資源

 地球表面は、岩石とは異なる物質によって薄く覆われています。これは土壌と呼ばれますが、無機の地球と生物との合作です。つまり、生物とくに植物が存在しないとできませんので、地球にしか存在しません。世界平均では1mにも達しないと推定されています。土壌がいったん形成されると、これは植物などの生態系の誕生と維持にとって非常に重要な働きをします。砂漠を想像してください。そこには土壌は存在しません。地球環境問題の砂漠化や森林減少と密接に関係していますが、上記の水資源との関わりも非常に大きなものです。

 

8.おわりに

 地球資源は限られています。今まで幸いなことに世界的にみれば実際に枯渇した資源は知られていません。必須でない場合は、うまく代替資源の発見と利用によって解決してきました。

 資源の消費量が増えるのは、人口の増大と一人当り消費量の増大です。とくに後者は飽くなき生活の質の向上への願望に基づいていますが、行き過ぎた過大消費と考えられるケースも、いわゆる先進国グループの国々を中心に増えてきました。

 今後は、資源の枯渇問題と地球環境問題はますます重要性を増すものと予想できます。幸いにも、両者に共通する対策を講じることは可能と思われます。ただし、残された時間は多くはありません。

 日本の場合、3大グループに属する資源はほとんどを輸入に頼っています。日本は本質的に資源のない国ではなく、使い過ぎた結果が現状なのです。しかし、水と土壌資源には恵まれています。これは簡単に言えば、ただ位置的に緯度が良かったため、気象条件に恵まれたためです(適度な気温と比較的多い降水量)。

 日本の将来をみますと、既に人口増大のピークは過ぎて、今後は減少するばかりのようです。一人当りの消費量の増大は続きそうですが、少子高齢化の影響はどのような形になるのでしょうか。

 日本の場合、一番心配なのは3大グループの資源を外国に頼りすぎていることです。国際的に資源が十分に残されており、さらに日本がそれらを買える経済状況が続けば、現状を維持することは可能です。しかし、私には、何でも買える時代がそう長く続くとは思えません。地球環境問題の影響も不透明です。そのような条件はおいても、国際的な平和は根底的に不可欠の条件と考えられます。

 資源と環境のために、日本は何をすべきか、そのようなことを考えるだけでなく、実際に行動を起こさなければならない時期にきていると思います。