島津(1987)による〔『新版環境アセスメント』(116p)から〕


アセスメント
 国や自治体の議員・職員の方々には「環境アセスメント」についての知識がだいぶん浸透してきたようであるが、一般には「環境アセスメントって何ですか?」というのが実情であろう。そこで、まずその解説からはじめよう。
 開発行為が空気・水・土・生物等の環境に及ぼす影響の程度と範囲、その防止策について、代替案の比較検討を含め、事前に予測と評価を行なう
ことというのが、環境庁による環境アセスメントの定義である。ただし、環境庁は「環境影響評価」とよんでいるが、漢字が並んで難しいので、普通は「環境アセスメント」とよび、ここでもこの俗称を使うことにする。もっと略して「アセス」とよぶ人もある。
 「アセスメント」(assessment)はむろん英語で、英語圏の国では日常使われる言葉であり、辞書をひくと、
 assess: fix amount of tax, determine the value of
などとあって、税金の事前申告のことを指している。「環境アセスメント」自身も、もちろんアメリカからの輸入品である。
 昭和45年(1970年)の1月1日に、アメリカでは国家環境政策法(NEPA)がスタートし、その中で、政府の関係する事業について、環境アセスメントを行い、これを公表することが制度化された。
 なお、UNEP(国連環境局)は、環境アセスメントを
 人間の行動が環境を変える恐れのある時、どうしたらよいかを確認し、予測し、分析し、公表する行動
としている。
 とにかく、「道路を作ろう」「工場を作ろう」という時に、できてしまってからではもうおそいので、公害や自然破壊をおこさないかを事前に見極めることが「環境アセスメント」である。
 なお、アメリカや国連環境局は、「公表する」ことをわざわざうたっているのに、環境庁の定義にはこれがないことを注意してほしい。第T部を見ても、わが国では「公表」が苦手のようで、環境アセスメントでも、常に「公表の問題」がつきまとうことは、以下の各所で見る通りである。』