−目次−
はじめに…………………………………………………………………………………………
1
第1章博物館をめぐる昨今の動向………………………………………………………… 1
1 博物館制度の問題点…………………………………………………………………… 1
(1)多様化する博物館への対応………………………………………………………… 1
(2)博物館登録制度の現状……………………………………………………………… 2
(3)学芸員制度の現状…………………………………………………………………… 2
2 博物館を取り巻く状況………………………………………………………………… 3
3 生涯学習社会への対応………………………………………………………………… 4
第2章博物館とは…………………………………………………………………………… 4
1 博物館に求められる役割……………………………………………………………… 4
2 博物館法上の博物館の定義の在り方………………………………………………… 5
(1)博物館の基本的要件………………………………………………………………… 5
(2)博物館の定義の在り方−博物館資料との関係− ………………………………… 6
第3章博物館登録制度の在り方について…………………………………………………… 7
1 現行登録基準について………………………………………………………………… 7
2 博物館登録制度改善の方向性………………………………………………………… 8
(1)新しい登録制度の考え方…………………………………………………………… 8
(2)新しい登録制度の範囲……………………………………………………………… 9
(3)新しい登録基準の骨格……………………………………………………………… 10
(4)登録審査機関について……………………………………………………………… 11
(5)一定期間ごとの確認について……………………………………………………… 12
(6)情報公開と名称独占等について…………………………………………………… 12
(7) 博物館の評価について……………………………………………………………… 13
第4章学芸員制度の在り方について……………………………………………………… 13
1 現状における学芸員制度の問題点…………………………………………………… 13
(1)利用者の学芸員等に対する意識について………………………………………… 14
(2)大学の学芸員養成課程について…………………………………………………… 14
(3)現職学芸員の課題について………………………………………………………… 14
2 これからの学芸員制度に求められること…………………………………………… 15
(1)学芸員に求められる専門性………………………………………………………… 15
(2)これからの学芸員制度に求められること〜学芸員のキャリアと段階的養成・研修〜 ……… 16
3 今後の見直しの方向性………………………………………………………………… 16
(1)学芸員の養成段階の在り方について……………………………………………… 16
(2)現職学芸員の段階的な専門的資質・能力の向上………………………………… 18
第5章博物館運営に関する諸問題について……………………………………………… 20
1 指定管理者制度等について…………………………………………………………… 20
2 公立博物館の原則無料規定の扱いについて………………………………………… 21
3 博物館倫理について…………………………………………………………………… 22
4 博物館を支える多様な人材の養成・確保…………………………………………… 22
(1)教育普及等の専門人材の養成・確保……………………………………………… 23
(2)様々な人材が博物館で活躍できる仕組みの検討………………………………… 23
第6章博物館に関する総合的な専門機関の必要性……………………………………… 23
(1)博物館登録審査と博物館評価……………………………………………………… 23
(2)上級学芸員等の人材の資格認定、資質向上……………………………………… 24
(3)全国の博物館、大学、学会等に関するネットワーク形成支援………………… 24
おわりに…………………………………………………………………………………………
24
別紙1 今後、早急に検討する必要がある事項について………………………………
25
別紙2 新しい博物館登録制度によって期待されるプラス効果…………………… 27
別紙3 これまで博物館登録の対象外であった博物館についての考察…………… 28
別紙4 将来の学芸員のキャリアパス(イメージ)(大学卒学芸員の場合) ……… 30
別紙5 「博物館に関する科目」の見直しの方向性………………………………… 31
別紙6 学芸員資格取得までの流れ(大学卒業者の場合)(イメージ) …………… 32
別紙7 学芸員の高度な専門性を評価する上位資格の創設について……………… 33
参考1 参照文献等……………………………………………………………………… 34
参考2 第54回全国博物館大会決議………………………………………………… 35
参考3 「卓拔と均等〜教育と博物館がもつ公共性の様相〜」(米)、「共通の富〜博物館と学習〜」(英)……… 36
参考4 ユネスコやICOM(国際博物館会議)規約など、国際的な博物館の定義(抜粋:仮訳) ……… 37
参考5 諸外国における博物館職員の養成に関する参考事例……………………… 39
参考6 博物館職員の研修事業………………………………………………………… 40
参考7 「博物館をあらゆる人に開放する最も有効な方法に関する勧告」(抜粋:仮訳)……… 42
「新しい時代の博物館制度の在り方について」の概要……………………………… 44
「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」審議経過………………… 45
「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」委員……………………… 47
「新しい時代の博物館制度の在り方について」報告書 参考資料
T.博物館及び学芸員に関する統計等
1.博物館等数及び入館者数の年代比較
2.館種別博物館等数及び入館者数の比較
3.博物館等数の推移
4.館種別博物館等数の推移
5.公立博物館における指定管理者の導入状況
6.公立博物館における社会教育費の推移
7.教育委員会の予算および生涯学習・社会教育に係る年間の事業額
8.設置者別博物館等数
9.所管別博物館相当施設及び博物館類似施設数(公立のみ)
10.博物館類似施設の現状
11. 設置主体別登録博物館,博物館相当施設,博物館類似施設の状況
12. 博物館に関する都道府県教育委員会の調査結果について
13. 博物館資料購入予算の状況
14. 博物館等における入館料の状況
15. 入館料を有料とする博物館等のうち減免措置のある館数
16.博物館等におけるボランティア活動状況
17. 博物館等1館当たりの職員数の状況
18. 館種別博物館等数及び学芸員数
19. 専門的職員への期待
20. 博物館の学芸員についての認識
21. 博物館が認識する自館の問題点
22. 学芸員制度全般に関する課題
23.学芸系職員に必要と考える資質、能力
24. 新任学芸系職員に最も期待する資質、能力
25.研修プログラムへの参加状況、不参加の理由
26.今後充実を希望する研修プログラム(学芸系職員対象)
27.学位の有無と種類(学芸系職員対象)
U.関係法令・告示等
1.教育基本法(平成18年12月22日法律第120号)
2.社会教育法(昭和24年6月10日法律第207号)
3.博物館法(昭和26年12月1日法律第285号)
4.博物館法施行令(昭和27年3月20日政令第47号)
5.博物館法施行規則(昭和30年10月4日文部省令第24号)
6.公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準(平成15年6月6日文部科学省告示第13号)
7.私立博物館における青少年に対する学習機会の充実に関する基準(平成9年3月31日文部省告示第54号)
8.博物館法第16条の規定に基く都道府県教育委員会規則制定事項について(昭和27年2月9日文部省社会教育局長通知)
9.博物館の登録審査規準要項について(昭和27年5月23日文部省社会教育局長通達)
10.博物館に相当する施設の指定について(昭和46年6月5日文部省社会教育局長通知)
11.博物館に相当する施設の指定の取扱について(平成10年4月17日文部省生涯学習局長通知)
12.社会教育主事、学芸員及び司書の養成、研修等の改善方策について(別紙2 学芸員養成科目の改善)(報告)(平成8年4月24日生涯学習審
議会社会教育文科審議会)
博物館は、様々な活動を通じて教育、学術、文化の発展に寄与してきたところであるが、今日、人々の学習要求の多様化・高度化や社会の進展・変化に対応し、さらに積極的な役割を果たすことが期待されている。
博物館法は昭和26年に制定され、爾来我が国の博物館の活動の基盤を提供してきたが、制定後半世紀以上経過し、博物館法が担うべき機能も、我が国が生涯学習社会への移行を遂げていく中で、大きく拡大、変化している。とりわけ、今般、教育基本法が改正され、国民が生涯にわたって学習することができ、その成果を適切に生かしていくことができるという、生涯学習の理念等が謳われたことで、そのような視点から博物館活動の基盤となる博物館法が今後、適切に機能していくことができるのか、改めて検討することが必要となった。
このため、「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」においては、上記の視点から、法制定時以降の社会の変化と博物館の変遷、今日の博物館が抱える課題、今後、期待される博物館の機能等を踏まえ、博物館法が定める基本的要件ないし制度である@博物館の定義、A博物館登録制度、B学芸員制度、が今日、十分に機能しているかについて検討するとともに、問題点の把握・分析を行い*1、今後博物館が社会から期待される役割を果たしていくために必要な博物館制度の見直しの方向性を示した。
博物館の在り方を改善していく上で、法制度が果たす役割は、博物館がその公益性を充分に発揮し、社会に貢献していく基盤を整備することである。特に、地域の公立博物館においては、地方分権の推進の下、それぞれの地域において、何のために博物館が存在しているのか、改めて問い直すとともに、博物館設置者、博物館及び職員、学芸員を養成する大学、学協会、さらには博物館利用者が、各博物館の改善に向けてそれぞれの役割を果たしていくことが重要なことである。
今回の見直しは、生涯学習社会における博物館法の役割を再構築するとともに、現行の博物館法における現状と法制度の乖離を解消し、法が国民や社会のため博物館活動の一層の振興に貢献しうるようにとの視点で検討したものであるが、今後、博物館法の具体的な見直しに際しては、当会議が整理・検討した考え方を基本に、さらに発展させることを期待している。
1.登録制度関係
登録制度の検討においては、第一に、博物館の基本要素である資料収集、調査研究、展示、教育普及(学習支援)について博物館であるために必要な条件について明確にする必要がある。
第二に、博物館の基本要素の定義を基に、共通基準と特定基準を設定する必要がある。共通基準については,すべての館に必要なレベルの妥当性を検討するとともに、特定基準については館種等どのような分類で博物館群を位置づけることが適切かを検証する必要がある。
2.学芸員制度関係
(1)学芸員養成科目の見直しについて
大学の博物館に関する科目は、従来から修得が求められていた資料の取扱い等についての基礎的な技術に加え、「第4章2(1)学芸員に求められる専門性」で述べられている新たに求められる知識・技術の修得を加える必要がある。このため、現行の科目については、社会の変化や利用者のニーズ、学芸員養成科目の体系化に則して内容を見直し、新たな科目の追加、単位数の拡充等を早急に検討する必要がある。
@ 学芸員養成科目の充実
科目編成や単位数について見直し、学芸業務を遂行するために最低限必要とされる知識・技術を明確にするとともに、新たな科目編成・内容とする場合は、各科目に含まれるべき内容・要素の例示が必要であり、また、大学関係者によるモデル的なカリキュラム作成の支援が必要である。
A 博物館実習の見直し
博物館実習についても、これまで以上に大学と博物館の連携・協力を緊密にし、その内容を精査することが求められる。特に、実習の実態については、その扱いが大学や受入先の博物館によりかなり差があり、参考となる実習内容を例示する必要がある。
ただし、見直しの際には、年間約1万人の学生が実習を行うことを考慮し、受け入れ側である博物館に過度の負担がかかることのないよう、配慮しながら検討することが必要である。
(2)実務経験の導入について
本報告では、登録博物館にふさわしい質と活動を担う専門職員としての「学芸員」とは、大学等における「博物館に関する科目」の修得(現行資格に該当、「学芸員基礎資格」取得者)の後、登録博物館に雇用される等により、一定期間(1年以上)の実務経験等を積んだ者と位置づけている。なお、実務経験の導入にあたっては、以下の点に留意することが必要である。
@ 職務内容等の明示、ガイドラインの作成
「博物館における1年間の実務経験」については、具体的に携わるべき職務内容や到達すべき目標を明示することが必要であり、当該職務は博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究に関する職務等、館種を問わず博物館に共通する基本的職務とすることが必要である。
実務経験を資格要件とする場合には、求められる基本的職務のガイドラインを策定することについて引き続き検討することが必要である。
A 実務経験の審査・証明
さらに、実務経験を具体的な資格要件とする上では、資格取得希望者が積んだ実務経験を審査あるいは確認することも必要である。例えば、資格取得希望者は、実務経験の内容・実績報告書及び従事した博物館館長名等による職務内容証明書を国に提出して審査・確認を受けることにより、学芸員資格の信頼性・汎用性を担保することも考えられる。その際に、実務経験に応じた専門分野を明示することなども考えられるが、これらの審査にあたっての具体的な内容・方法については引き続き検討が必要である。
B 博物館での受け入れ体制
見直しの方向性は現行資格の制度内容と大きく異なることから、博物館の受入体制の確保、指導体制の充実についても十分な検討が必要である。
C 制度導入の普及啓発、準備期間
新制度を導入する場合には、博物館、大学、学生、利用者、行政、企業等の置かれている状況、制度導入により与える影響、制度導入の準備期間等について十分に勘案することが重要である。
また、学芸員の重要性や活動内容を社会的に普及啓発するとともに、学芸員を含めた博物館制度の概要等についても制度導入時期の前後に広く普及啓発する必要がある。その際、大学において博物館に関する科目の修得者(「学芸員基礎資格」取得者)の博物館での就職がこれまで以上に円滑に進むような広報も必要である。
なお、制度の導入に際しては、大学、博物館等において様々な準備が必要であり、相当の準備期間をおく必要がある。
(3)大学院における学芸員養成制度の創設について
大学院における資格付与制度を整備するためには、その前提として、学芸員養成に意欲のある大学院の実態も踏まえて、大学院段階における学芸員養成教育のための教育プログラムを開発するとともに、大学院における学芸員養成の具体的仕組みを検討し、大学院と博物館が協力し、教育プログラムの中に博物館実務を十分に含める学修を効果的に位置づけられることが必要である。特に、資格制度導入に際しては、国による実態調査や大学関係者によるカリキュラム開発支援等を通じて、適切な環境整備を図る必要がある。