学芸員養成の充実方策について(報告)  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/014/gaiyou/1246188.htm
 2009年2月、24p。


【目次】

T.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
U.大学において修得すべき「博物館に関する科目」の見直し・・・・・・・・・・ 2
1.これまでの経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2.これからの学芸員に求められる資質・能力(改善の必要性)・・・・・・・・・ 2
3.「博物館に関する科目」の基本的考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
 (1)大学における学芸員養成教育の在り方について・・・・・・・・・・・・ 3
 (2)大学における学芸員養成課程の現状について・・・・・・・・・・・・・ 4
 (3)科目の読み替えについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
4.「博物館に関する科目」の改善方策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
5.経過措置について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
6.各大学における取組の充実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
V.学芸員資格認定の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
1.これまでの経緯・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
2.学芸員資格認定制度の基本的考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
3.試験認定の改善方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
 (1)試験認定の受験資格・資格発生要件の見直しについて・・・・・・・・・ 9
 (2)試験認定の方法及び試験科目の見直しについて・・・・・・・・・・・・10
 (3)口述試験の見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
 (4)試験科目免除の扱いの見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・11
 (5)手数料の見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
 (6)経過措置について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
4.無試験認定の改善方策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
 (1)受験資格の見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
 (2)審査内容の見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
 (3)名称の見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
W 今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

(別紙1)「博物館に関する科目」の現行科目と改正案の比較
(別紙2)大学における学芸員養成科目の改善(ねらい・内容)


T.はじめに

 「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」においては、平成18年9月に発足以来、博物館法制定時以降の社会の変化と博物館の変遷、今日の博物館が抱える課題、今後、期待される博物館の機能等を踏まえ、博物館法が定める基本的要件ないし制度である@博物館の定義、A博物館登録制度、B学芸員制度が、今日、十分に機能しているかについて検討するとともに、問題点の把握・分析を行い、平成19年6月に報告書「新しい時代の博物館制度の在り方について」(以下「第1次報告書」という。)として提言を取りまとめた。
 第1次報告書や中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」(平成20年2月19日)等を踏まえ、政府において第169回国会に博物館法の一部改正案を含む「社会教育法等の一部を改正する法律案」を提出し、審議・可決の上、6月11日に公布・施行されたが、博物館登録制度及び学芸員制度の見直しについては盛り込まれず、中長期的な検討課題とされた。
 一方、大学における学芸員の養成課程に関しては、博物館法施行規則(文部科学省令)において規定しており、上記中央教育審議会答申において「国際的にも遜色のない高い専門性と実践力を備えた質の高い人材として育成されるよう、大学等における養成課程等において修得すべき科目、単位についての具体的な見直しを含め、今後その在り方について検討が必要である」との提言がなされた。また、教育振興基本計画(平成20年7月1日閣議決定)においても、「学芸員の資質向上を図るため、その修得すべき科目の見直し等養成課程の改善を図る。」と記述されている。
 本協力者会議においても、第1次報告書において「今後、早急に検討する必要がある事項」の一つとして学芸員養成科目の見直しを掲げており、博物館法施行規則等の改正を視野に入れつつ、平成19年8月に「学芸員の養成に関するワーキンググループ」を発足させ、学芸員の養成課程の充実及び博物館実習の見直し等について、幅広く関係者からの意見も聞きつつ専門的な検討を行った。また、平成20年11月には「学芸員資格認定の見直しに関するワーキンググループ」を発足させ、試験認定及び無試験認定の在り方についても検討を行った。
 これらの検討結果を取りまとめたのが本報告書であり、今後、本報告書において提言した内容をもとに大学における学芸員養成及び学芸員資格認定制度の充実が図られ、我が国から国際的に活躍できる高度な専門性と実践力を備えた学芸員が多数輩出されていくことを期待したい。
 なお、本協力者会議においては、残された課題である「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」の見直しや、大学院における学芸員養成制度のあり方等についても引き続き検討を行うこととしているが、国においても中長期的な検討課題とされた登録制度の見直しに向けて積極的に検討を行い、できるだけ早く結論が出ることを望みたい。


W 今後の課題

○ グローバル化がますます進展する中で、引き続き国際的に遜色のない質の高い学芸員の養成に向けて不断の努力が必要である。本協力者会議としては、今回の見直しで終わりではなく、大学における科目・単位のあり方について定期的に見直すとともに、必要に応じ、さらなる拡充を図っていく必要があると考えている。
 今回、「博物館に関する科目」の見直しに際して新たな必修科目を設けることを提言したが、今後、それらの科目がさらに学問的に発展するよう、大学関係者のみならず学芸員をはじめとする博物館職員や学協会等の関係者が積極的に研究を行い、その成果を発表することを期待したい。言うまでもなく博物館活動の基礎は研究であり、学芸員の研究者としての地位の向上やその意欲の向上を図る観点から、学芸員がより一層研究しやすい環境を整備することが望まれる。

○ あわせて、昨年6月の博物館法改正により新たに学芸員等の研修の努力義務規定が新設されたことを踏まえ、国及び都道府県教育委員会が、新任館長研修や経験年数等に応じた現職研修等を実施することが望ましく、これらの研修の体系化や自己研鑽の在り方、多様なキャリアパスの形成等も視野に入れた総合的な観点からの検討が必要である。また、私立博物館は言うまでもなく、地方公共団体の長が所管している博物館に対しても、これらの研修等に関する情報が適切に提供されるよう、情報の共有化が図られることが望まれる。

○ 博物館実習に関しては、速やかに国がガイドラインを作成するとともに、博物館と大学が連携して博物館実習の先駆的な実践研究を行うことについて検討することが必要である。

○ 将来的には大学院における教育の充実を図ることや、上級資格をはじめとする高度な人材の認定も視野に入れた検討も必要である。
 第1次報告書においては、博物館に関する総合的な専門機関を設立し、将来的に博物館登録審査や学芸員資格審査等を第三者専門機関による自立的な運営に委ねていくことなどを提言したが、特に受験者数が必ずしも多くない資格認定については、国が直接実施するよりも第三者専門機関が行ったほうが効果的であるとも考えられ、引き続き中長期的な課題として検討することが必要である。

○ 我が国の学芸員のより一層の資質の向上が図られることは、博物館そのものの質の向上と発展につながることが期待され、引き続き各博物館の設置者、博物館及び職員、学芸員を養成する大学、学協会、さらには博物館利用者をはじめ博物館関係者が一丸となって取り組んでいくことが重要である。



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