目 次
はじめに …………………………………………………………
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ねらい …………………………………………………………
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1.学内実習 ……………………………………………………
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(1)見学実習 ………………………………………………… 5
(2)実務実習 ………………………………………………… 6
(3)事前・事後指導 ………………………………………… 7
2.館園実習 ……………………………………………………
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3.留意事項 ……………………………………………………10
(参考)館園実習実施計画例 ……………………………………13
博物館実習は、博物館法施行規則第1条に基づき、大学において修得すべき博物館に関する科目の一つとされており、登録博物館又は博物館相当施設(大学においてこれに準ずると認めた施設を含む。)における実習により修得するものとされている。
大学における学芸員養成教育においては、博物館概論、博物館経営論、博物館資料論、博物館資料保存論、博物館展示論、博物館情報・メディア論、博物館教育論等の講義を通じて、広範にわたる専門的な事項について理論的・体系的に学ぶこととされているが、博物館の専門的職員たる学芸員としてのスタートが切れるだけの基本的な素養を身につけるためには、それらの知識・技術や理論を生かして現場で博物館資料を取り扱った
り、利用者に対応するなどの実践的な経験や訓練を積むことが必要である。
このため、大学において履修すべき博物館に関する科目においては、学芸員制度が発足した昭和26年の博物館法制定を受けた翌27年の博物館法施行規則制定当初から博物館実習3単位が必修とされ、平成8年の改正により、博物館実習の一層効果的な実施を図るため、大学における博物館実習に係る事前及び事後の指導の1単位を含む3単位が必修となっている。
博物館実習は、実習生を受け入れる博物館にとっても、定期的に実習生を指導することによる基礎・基本の確認や、第三者の視点から日常業務を確認したり、博物館活動を見直す機会にもなっている。一方で、受け入れ体制が不十分であったり、博物館実習に臨む大学及び学生の態度や目的意識が千差万別であることなどから、実習の受け入れが大きな負担となっている博物館も多く、大学や学生の期待に十分こたえられる実習内容を提供できない場合もある。このことは、博物館実習の具体的な目的や内容が規定されておらず、各大学や博物館の判断に任されてきたことにも一因がある。
こうした状況を踏まえ、これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議では、報告書「新しい時代の博物館制度の在り方について」(平成19年6月)において、「博物館実習については、これまで以上に大学と博物館の連携・協力を緊密にし、その内容を精査することが求められる。特に、実習の実態については、その扱いが大学や受入先の博物館によりかなり差があり、参考となる実習内容を例示する必要がある。ただし、見直しの際には、年間約1万人の学生が実習を行うことを考慮し、受け入れ側である博物館に過度の負担がかかることのないよう配慮しながら検討することが必要である。」と提言している。
このため、文部科学省においては、平成21年3月の博物館法施行規則の改正を機に、「博物館実習のガイドライン」を作成し、博物館に関する科目を設置する大学及び博物館実習を受け入れる博物館の参考に資するよう、その目安となる実習内容と留意事項を示すこととした。社会教育施設である博物館は、学芸員をはじめとする博物館に関する人材を育成する責務も有しており、そのことを通じて博物館全体の質の向上につながることを改めて認識する必要がある。本ガイドラインは、博物館実習が必ずこれに沿って実施されなければならないことを示す性質のものではないが、各大学や博物館においては、これまでその創意工夫により進めてきた博物館実習の取組の中に、本ガイドラインで示す内容を適宜取り込むことにより、より一層の改善充実に尽力されることを期待したい。
なお、本ガイドラインは、平成24年4月より施行される改正後の博物館法施行規則を踏まえて作成しているが、各大学及び博物館においては、その施行前においても本ガイドラインを参考にしつつ、博物館実習が真に効果的なものとなるよう取り組むことが望まれる。
文部科学省では、今後とも本ガイドラインがより質の高い学芸員を養成することに資するよう継続的に見直すこととしており、関係者の皆様からの積極的な提言を期待したい。
○ 博物館実習は、学芸員養成教育において学んだ知識・技術や理論を生かして、学内及び館園での実体験や実技を通して、学芸員として必要とされる知識・技術等の基礎・基本を修得することを目標とする。
○ 博物館実習は、大学における学芸員養成教育の最終段階における科目と位置づけることを基本とするが、その準備段階として早期から館園見学や学内での実務実習等を通じて博物館の仕事や役割に関する理解を深めていくことが望ましい。
本ガイドラインは、「学内実習」、「館園実習」及び「留意事項」の三本立てで構成されており、「学内実習」及び「館園実習」を実施する上で大学と博物館の双方が認識すべき指針を示すとともに、博物館実習全体としての留意事項を提示している。
○ 「学内実習」においては、博物館における館園実習の事前・事後指導と他の科目の補足を兼ねて、学内の実習施設等において資料の取り扱いや収集、保管、展示、整理、分類等の方法、調査研究の手法等について学ぶことを目的とする。
○ 「館園実習」においては、学内実習で学んだ内容を博物館の現場で実際に経験することで、博物館の理念や設置目的、業務の流れ等に対する理解を深めると同時に、博物館資料の取り扱いや教育普及活動、来館者対応等実務の一端を担うことにより、学芸員としての責任感や社会意識を身に付け、博物館で働く心構えを涵養することを目的とする。
@目的
A単位・時間数
B実習施設
C指導体制
(1)見学実習
@履修の順序・実施時期
A形式
B見学する博物館
C見学実習費
D実習中の保険加入
E大学と博物館との連携
(2)実務実習
@受講人数
A実施場所
B実習内容
(3)事前・事後指導
@履修の時期
A時間数・日数
B指導内容
@目的
A単位・時間数
B履修の順序・実施時期
C受講人数
D実習期間
E実習先
F 実習生の専門分野と館種の関係
G 実習内容
H実習費等
I実習中の保険加入
J指導体制
K評価
〔大学〕
○ 博物館実習は、他の博物館に関する科目(講義)と密接な関係にあることを認識の上、博物館展示論や博物館資料保存論等で実技を取り入れる場合は、博物館実習で取り扱う内容と事前に十分に摺り合わせを行い、役割分担を行うこと。
○ 博物館実習を実験等の他の科目で代替して開講することは、適切ではないため、厳に慎むこと。
○ 限られた時間内での博物館実習では、博物館の仕事の一端を垣間見るに過ぎないため、学芸員養成教育(課程)全体を通じて、学生が多様な展示を見学し、現場を学べるよう、学生の自主性に任せて様々な博物館を見学するよう指導すること。特に、博物館実習を契機に、機会あるごとに、より多くの博物館を見学するよう促すこと。
○ 館園実習は、基礎実習と専門実習のように修得段階に応じて複数回実習を行ったり、大学附属博物館における展示の企画・制作や、博物館のインターンシップ制度を活用した実習等の実践例もあり、各大学において効果的な実施方法を工夫すること。
○ 学芸員の仕事は対人関係が多く、信頼性やコミュニケーション能力が求められることから、学生に対して知識・技術の習得のみならず、優れた識見と人格を有する全人的な向上に努める必要があることを指導すること。
○ 学芸員は、生涯学習社会における社会教育指導者として、人々の多様な学習ニーズを把握し、学習活動を効果的に支援する必要があること、また、博物館は、地域住民やボランティアをはじめとする多くの人々に支えられているという認識を持つよう指導すること。
○ 常日頃から実習受け入れ先となる博物館との連携・協力が緊密なものとなるよう努めること。
○ 学芸員として多様な活動を経験する観点から、学生に対し、積極的に博物館のインターンシップ制度の活用や、博物館ボランティア等への参加が有意義であることを指導すること。
○ 大学は、学芸員を志す者としてふさわしい学生を、責任を持って実習先の博物館に送り出すことが求められる観点から、場合によっては実習に出さないという判断や、実習の中止を含む対応もあり得ること。
〔博物館〕
○ 博物館は、学芸員をはじめとする博物館に関する人材を育成する役割を有していることを自覚し、次世代の学芸員を育てるという気概を持って、館務に支障のない範囲内で組織的に博物館実習を受け入れる体制を整備すること。
○ 博物館実習は、学芸員を志向する学生自らが、大学の学芸員養成教育において学んだ知識・技術や理論を生かして現場での実践的な経験を行うことによって、学芸員としてのスタートが切れるだけの基本的な素養を身に付ける科目であると同時に、その適正や進路を考える貴重な機会であることを認識し、単なる講義や事務補助等にとどまらない実習内容を提供するよう配慮すること。
○ 実習生が受け身一辺倒とならず、自ら考え、学芸員として必要な企画・立案能力を養うことができる内容となるよう工夫すること。
○ 常日頃から実習生を派遣する大学との連携・協力が緊密なものとなるよう努めること。