水野清秀・南木睦彦(1986):広島県西条盆地南部の第四紀の層序.地質調査所月報、37(4)、183-200.


Abstract
1.はじめに
2.地形・地質概説
3.地質各説
 3.1 基盤岩類
 3.2 西条層
  3.2.1 層序及び層相
  3.2.2 火山灰層
  3.2.3 植物化石
 3.3 段丘堆積物及び扇状地・崖錐堆積物
  3.3.1 上位段丘堆積物
  3.3.2 下位段丘堆積物
  3.3.3 古期扇状地・崖錐堆積物
  3.3.4 新期扇状地・崖錐堆積物
 3.4 沖積層
4.周辺地域の第四系との比較
 4.1 西条層
 4.2 段丘堆積物及び扇状地・崖錐堆積物

5.堆積年代
 西条層の年代については、東元ほか(1985)にまとめられている。東元ほか(1985)は、黒瀬盆地の西条層中の岡郷火山灰層及びその下位の楢原(ならはら)火山灰層(第7図:略)のフィッション・トラック年代をそれぞれ0.57±0.09Ma、0.61±0.11Maと求め、その年代値は信頼性が高いとみなした。また岡郷火山灰層を、鉱物組成、火山ガラスの形状、火山ガラス・斜方輝石の屈折率等の類似性やフィッション・トラック年代値から、大阪層群中の栂(とが)火山灰層(吉川、1976、1984;第1表:略)に対比した。さらに黒瀬盆地の西条層中にはメタセコイア植物群(市原、1960)の要素が見られないことから、これを総合して、西条盆地南部の西条層の層準も考慮に入れて、西条層全体の年代を約70-50万年と推定した。年代に関して、本論文で付け加えるデータはない。岡郷火山灰層と栂火山灰層の対比については再検討中である。両火山灰層の構成鉱物を細かく比較した結果、栂火山灰層の中に岡郷火山灰層と異なる特徴をもつ角閃石が少量含まれていることがわかった。これらは、堆積時または堆積後に混入した可能性もある。今後火山ガラス及び鉱物の化学組成の比較等の十分な検討が必要である。
 上位段丘堆積物の年代については、直接的なデータはないが、東元ほか(1985)で述べられているように、堆積物が極度の風化を受けていないこと等から判断して、関東地方の「下末吉層」頃の年代か、それよりは少し新しい時期のものであると考える。また、下位段丘堆積物中に挟在する火山灰層は、東元ほか(1985)で指摘されているように、姶良(あいら)Tn火山灰層(町田・新井、1976)や同時期の噴出物と考えられている入戸(いと)火砕流(町田・新井、1976)と鉱物組成、火山ガラス・斜方輝石の屈折率等の岩石学的特徴がよく一致し(第1表)、本火山灰層は、姶良Tn火山灰層に対比される。火山灰層の対比に従えば、姶良Tn火山灰層の年代が約21,000-22,000年と見積られている(町田・新井、1976)ことから、下位段丘堆積物は、約2万年前前後のものと考えられる。扇状地・崖錐堆積物の年代を直接示すデータはないが、堆積物の風化の程度等から、古期扇状地・崖錐堆積物は上位段丘段丘堆積物と、新期扇状地・崖錐堆積物は下位段丘堆積物と、ほぼ同時期または近い時期のものであると考えられる。』

6.まとめ
文献

〔『水野清秀・南木睦彦(1986):広島県西条盆地南部の第四紀の層序.地質調査所月報、37(4)、183-200.』から



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