はじめに
第1章 水質環境管理の現状と課題
1.1 日本の水質環境問題の変遷と現在
1.1.1 日本の水質環境問題の歴史と法制度の変遷
1.1.2 環境基本法制定以降の水質環境問題とその対策
(1)下水道整備の進んだ都市河川の水質汚濁
(2)閉鎖性水域の富栄養化
a.地域に応じた排水の高度処理の推進
b.面源からの汚濁負荷量の把握と削減
c.小規模事業場における窒素・リン負荷削減対策
d.湖沼の環境条件に応じた独自の対策の開発
e.土地利用規制の検討
(3)新たな対策が求められる水質問題
a.クリプトスポリジウム
b.病原性大腸菌O157
c.内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)
d.ダイオキシン類
(4)安全でおいしい水のための水源の確保
(5)河川における水質事故
(6)河川の直接浄化
1.2 日本の水環境保全行政
1.2.1 水質環境基準
(1)概要
(2)健康項目
(3)生活環境項目
1.2.2 排水基準
(1)排水規制
(2)一律基準
(3)上乗せ基準
1.2.3 水質総量規制
(1)総量規制制度
(2)総量規制基準
(3)生活排水対策
(4)窒素、リンの項目の追加
1.2.4 湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)
(1)湖沼法制定の経緯
(2)湖沼法の内容
1.2.5 地下水汚染対策
1.2.6 水道に関する水源二法
1.2.7 水環境保全行政の対応と課題
(1)負荷削減対策上の課題
a.排水規制
b.下水道整備
c.面源負荷
(2)法体系の課題
1.3 諸外国の水質環境管理
1.3.1 米国の水質環境管理
(1)水域保全に関する法律の歴史的な流れ
(2)Clean Water Action Planの概要
(3)Watershed Approachについて
(4)モニタリングに基づく流域汚染の把握
(5)排水規制とTDMLプログラムについて
1.3.2 ヨーロッパにおける水質環境管理の視点
(1)水質汚濁問題とその対策の歴史的流れ
(2)Water Framework Directiveについて
(3)EUにおける新たな水対策の重要な視点
a.流域単位の管理について
b.生態系保護と協調関係について
c.河川流域管理計画について
d.住民参加について
e.発生源対策型と目標基準達成型の連携
(4)具体的な管理方法、制度を含めた対策方針
(5)下水道整備状況やリン除去対策の現況報告
(6)ヨーロッパの水質現況
1.3.3 河川流域の国際比較研究事例の紹介
(1)3つの河川流域の地理的特性の概要
(2)Aberjona川流域の歴史的背景と諸課題
a.汚染の経緯
b.公衆衛生上の汚染
c.水環境としての課題
(3)Toess川流域の歴史的背景と諸課題
a.水量に関する側面
b.水質に関する側面
c.生態系の健康に関する側面
(4)流域の持続可能な管理のために
1.3.4 諸外国と日本における水質環境管理の相違点と今後の問題
(1)水質環境管理における相違点
a.河川や河川水質管理に求めるもの
b.飲料水源としての河川水質の位置づけ
c.河川水質に関係する法的な体系のあり方
d.市民管理下にある行政と市民訴訟制度
e.連邦政府と州政府の関係
(2)日本の水質環境管理の課題
a.地域特性と流域単位に基づく計画策定
b.河川生態系の調査研究に基づく管理計画
c.地下水や森林を意識した総合的な水質管理
d.環境情報公開や住民参加の体制づくり
e.面源汚染物質の取扱い
参考文献
第2章 水質環境保全のための管理および技術
2.1 概説
2.1.1 生活系汚濁源の対策
2.1.2 工場・事業場など汚濁源の対策
2.1.3 面源負荷対策
2.1.4 水域での対策
2.1.5 流域住民による対策
2.1.6 総合管理手法
2.2 生活系汚濁源からの負荷と対策
2.2.1 生活系汚濁排水による河川への影響
2.2.2 各種生活系汚濁物処理方法とその効果
(1)方法の分類
(2)下水道
(3)浄化槽
(4)まとめと今後の課題
2.3 工場・事業場など汚濁源の対策
2.3.1 工場排水対策
(1)工業排水対策の現状
a.業種別の工場排水の水質特性
b.工場排水水質と排水処理技術
c.事業場排水のトリハロメタン生成能
(2)業種別の回収水利用率の現状
(3)今後の工場・事業場など汚濁源の対策
2.3.2 畜産系排水
(1)畜産系排水対策の現状
a.畜産系排水の水質特性
b.畜産系廃水処理技術
(2)リスク:クリプトスプリジウム対策
(3)今後の畜産系排水対策
a.家畜糞尿の有効利用の推進
b.畜産系廃水処理技術
2.3.3 その他ゴミ処分場など排水対策
(1)廃棄物最終処分場対策
a.排水処理の現状
(2)今後の課題と対策
a.ダイオキシン類の対応策
b.有害重金属類およびプラスチック添加剤対策
2.4 面源の対策
2.4.1 面源負荷
2.4.2 山林、自然負荷対策
(1)山林、自然負荷対策の現状
a.森林からの直接流出および基底流出
b.森林の形態
c.森林における水の収支
d.再循環
e.施肥
f.ゴルフ場などの開発地域
g.酸性水の流入
h.酸性水対策
(2)今後の山林、自然負荷対策
a.地力の維持
b.森林伐採時の工夫
2.4.3 農耕地負荷対策
(1)農耕地負荷対策の現状
a.水田
b.畑、樹園地
c.畜産
d.負荷削減対策
@窒素・リンの対策
A適切な除草剤の使用
B排水の削減対策
C施肥の方法および肥料の選択
D農業用水の循環利用
E水田浄化能力の利用
F土地利用連鎖の活用
(2)今後の農耕地負荷対策
2.4.4 市街地負荷対策
(1)市街地負荷対策の現状
a.大気
b.降雨
c.道路
d.土壌
e.建設工事
f.街路樹などの整備
g.芝肥料
h.ゴミの投棄
i.下水道
(2)今後の市街地負荷対策
2.5 河川水の直接浄化対策
2.5.1 直接浄化対策の現状
(1)直接浄化の必要性
a.汚濁河川水の水質向上に果たす役割
b.面源負荷対策としての役割
c.富栄養化対策としての役割
d.地球規模環境問題を見据えた環境保全技術としての役割
(2)直接浄化対策の現状
(3)浄化技術の種類と方法
a.浄化技術の種類
b.浄化技術の特徴
@曝気
A浚渫
B沈殿
C浄化用水導入
Dバイパス
Eろ過、凝集、吸着
F生物膜浄化法
G土壌浄化法
H植物を用いた浄化法
I生態系を用いた浄化法
J生態系制御による浄化法
K多自然型川づくり工法
2.5.2 直接浄化技術の評価
2.5.3 今後の直接浄化対策
(1)直接浄化対策の課題
a.排水基準、環境基準と直接浄化対策の調和
b.治水対策と整合した直接浄化対策
c.化学物質の直接浄化対策
(2)水域における対策のあり方
a.流域管理における直接浄化対策の役割
b.生態工学を活用した直接浄化対策
c.廃棄物の有効利用による直接浄化対策
d.共生・参加をめざした直接浄化対策
2.6 流域住民による対策
2.6.1 流域住民による実施対策
(1)生活排水対策
(2)雨水対策設備の推進
a.貯留浸透システム導入による水循環の改善効果
b.宅内貯留施設普及の課題
c.雨水流出抑制事業の創設:行政の取組
d.小金井市の例
(3)水辺環境の美化対策
a.清掃活動
b.ゴミの不法投棄に対する取組
c.河川周辺の環境整備
(4)環境倫理の啓蒙
a.環境意識の形成
b.環境教育の方向性
c.環境教育・環境学習の推進方策に関する中央環境審議会の答申
2.6.2 流域住民による今後の対策のあり方
(1)各地の環境NPOの活動状況
a.筑後川流域連帯倶楽部
b.徳島市新町川を守る会
c.豊穣の郷赤野井湾流域協議会
(2)NPO活動の課題と住民参加のあり方
2.7 情報技術を活用した河川管理手法
2.7.1 河川環境モニタリング
(1)モニタリング技術
(2)最新センサー技術
(3)常時観測モニタリングステーション
(4)事故対応
2.7.2 GISの活用による河川環境総合管理
(1)GISとは
(2)河川環境管理に関連するデータの取込み
(3)河川環境管理のためのモデル化手順
(4)適用例
2.7.3 まとめ
参考文献
第3章 理想的な水質環境創出にあたっての主要課題
3.1 概説
a.水遊びのできる河川の創出
b.安全な河川水の確保:クリプトスポリジウムを例にして
c.多種多様な生物が生息できる河川の創出
3.2 水遊びのできる河川の創出
3.2.1 河川水質の視点から見た水遊びの種類
(1)見る
(2)触れる
(3)泳ぐ
(4)飲む・食べる
3.2.2 水遊びができる河川の要件
(1)景観
(2)臭気
(3)水が安全
(4)川底
(5)魚類などの生息
(6)アクセス
(7)水量など物理的条件
3.2.3 関連する水質項目
(1)求められる水質項目の種類
(2)直接的水遊びに関する既存の水質基準値
(3)間接的水遊びに関する既存の水質基準値
(4)既存の基準の特徴
(5)カリフォルニア州における水再利用基準に見られる基準の考え方
3.2.4 対策の提案と課題
(1)水質項目の選定と目標水質値の策定
(2)ゾーニングによる河川利用の高度化
(3)水質情報の住民への開示
(4)水質浄化対策の提案と課題
3.3 クリプトスポリジウムなどへの対策
3.3.1 クリプトスポリジウム症およびジアルジア症の概要
(1)クリプトスポリジウムおよびジアルジアの性質
(2)クリプトスポリジウムおよびジアルジアのライフサイクル
(3)感染経路および症状
(4)クリプトスポリジウムおよびジアルジアの感染例
(5)クリプトスポリジウムの検出方法
a.浮遊微粒子の濃縮・回収
@ろ過法
A遠心沈殿法
b.オーシストの部分精製
@遠心浮遊法
A免疫磁気ビーズ法
c.分別・同定
@顕微鏡観察法
Aフローサイトメトリー法
BPCR法による検出
CELISA法
(6)水道水源としての課題
(7)対策の現状
3.3.2 クリプトスポリジウムによる河川水汚染
(1)家畜・野生動物の糞尿由来
(2)汚水処理場排水由来
3.3.3 河川水に関する対策
(1)調査および監視体制の強化
a.水源対策
b.水道施設における対応
c.自治体の水道行政担当局の対応
d.水道水源域の調査研究
(2)水処理施設
a.膜ろ過の効果
b.消毒方法
(3)下水処理過程におけるオーシストの減少
(4)浄化槽
(5)家畜の糞尿
a.家畜の罹患状況の調査
b.処理実情の把握
c.処理施設からの飛散、流出の調査
3.4 多種多様な生物が生息できる河川の創出
3.4.1 河川、湖沼の生態系と水質の関係
(1)自然河川における水質、生物環境
a.河川における生産過程
@栄養塩元素のスパイラル
A原地性の有機物と異地性の有機物
b.食物連鎖と各栄養段階の生物群集、従属栄養生物に与える影響
@後生動物界での食物連鎖
A微生物ループ
B生物濃縮
c.水質汚濁の影響
@水質汚濁と生物群集
(2)河川の連続性と栄養塩、エネルギーの流れと生態系
(3)湖沼、ウェットランドの生物群集と水質との関わり
a.湖沼、ウェットランドの生物群集の構成とエネルギーの流れ
b.独立栄養生物と水質との関係
c.食物連鎖と水質との関わり
3.4.2 保全すべき環境と対策
(1)魚類
a.水温
b.溶存酸素
c.pH
d.濁度
e.有害物質
@個々の有害化学物質についての基準値設定のアプローチ
A包括的な汚濁指標設定のアプローチ
(2)ゲンジボタル
(3)ヒヌマイトトンボ
(4)回遊する動物たち
(5)洪水が必要な動物・植物
(6)今後の課題
参考文献
おわりに
対策の優先順位づけ手法の開発
非定常水質情報と面源負荷情報の蓄積と解析手法の開発
情報公開の促進とその手法の開発
複合的な対策の体系化
索引