後藤敏和(2010):よくある副作用症例に学ぶ 降圧薬の使い方 高血圧治療ガイドブック2009対応【第3版】.金芳堂、249p


目次

第1章 降圧薬の使い方のヒント 1
第2章 高血圧患者の診察・検査 7
第3章 高血圧治療ガイドライン2009年版について  
1. 高血圧治療ガイドライン2009年版 16
2. 血圧分類(正常血圧・高血圧の定義) 18
3. 高血圧患者の脳心血管リスク層別化 20
4. 初診時の高血圧管理計画 23
5. 降圧薬の積極的な適応と禁忌 25
6. 降圧目標 28
7. 日常診療上重要な病態における診療指針 29
8. ガイドライン2009年版の特徴 38
第4章 症例から考える降圧薬の使い方  

血圧とは? 44

降圧薬の作用機序 45

1.
カルシウム拮抗薬

47
  薬理作用/薬剤の特徴〔A.ジヒドロピリジン系:位置付け/副作用/Caチャンネルと薬剤/グレープフルーツュースの影響〕〔B.ジルチアゼム:位置付け/副作用〕

〔症例1・2・3〕

ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬1剤のみで、長期にわたり良好な血圧調節が得られた3症例 53

〔症例4〕

長時間作用型カルシウム拮抗薬により浮腫が出現した症例 55

〔症例5〕

ジルチアゼム(ヘルベッサー)によりU度房室ブロックを来した症例 57

〔症例6〕

肥大型閉塞型心筋症(HOCM)例にジヒドロピリジン系薬剤を投与し、血行動態の悪化を認めた症例 58

〔症例7〕

血管拡張薬(硝酸薬・ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬)が、経過に悪影響を与えてきたと考えられる肥大型閉塞型心筋症(KOCM)症例 62

〔症例8〕

ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬により歯肉肥厚を生じた症例 67

〔症例9〕

グレープフルーツジュース・グレープフルーツのアムロジピンとニフェジピンへの降圧効果・血中濃度に対する影響を確かめた症例 68

〔症例10〕

イトラコナゾール(イトリゾール)内服により、アゼルニジルピンの血中濃度が上昇し血圧低下を来した症例 73

2.
アンギオテンシンU受容体拮抗薬(ARB)

76
  薬理作用/位置付け/各ARBの特徴/副作用/ARBの使い分け/投与上の注意

ロサルタン(ニューロタン) 81

〔症例11〕

オルメサルタン(オルメテック)からロサルタン(ニューロタン)に変更し、尿酸は低下したものの血圧が上昇してきた症例 81

〔症例12〕

利尿薬とARBの併用で良好な血圧調節が得られた症例 82

カンデサルタン(ブロプレス) 84

〔症例13〕

ARB単剤で良好に降圧した症例 84

〔症例14〕

多剤併用にARBを追加し、著明な降圧をもとめた悪性高血圧症例 85

〔症例15〕

ARB投与により、蛋白尿が著明に減少した糖尿病性腎症例 86

〔症例16〕

ARB・カルシウム拮抗薬の併用にサイアザイド利尿薬を加えて良好な血圧調節が得られた症例 87

バルサルタン(ディオバン) 90

〔症例17〕

ARB単剤で長期にわたあり良好な降圧が得られた症例 90

〔症例18〕

カルシウム拮抗薬とARBの併用で良好な血圧調節が得られた症例 91

〔症例19〕

ARBとカルシウム拮抗薬の併用が著効を呈した症例 93

テルミサルタン(ミカルディス) 94

〔症例20〕

ARB(テルミサルタン)が血圧調節に著効を呈した透析症例 94

オルメサルタン(オルメテック) 96

〔症例21〕

バルサルタン(ディオバン)からオルメサルタン(オルメテック)に変更し著明な降圧を求めた症例 96

〔症例22〕

オルメサルタン(オルメテック)からバルサルタン(ディオバン)に変更し降圧効果が減弱した症例 97

〔症例23〕

ARBが投与後早期から著効を呈した若年性高血圧症例 98

〔症例24〕

ARB(オルメサルタン)投与により過度の降圧を認めた悪性高血圧症例 101
〔症例25〕 ARB投与による過度の降圧により意識喪失を来したと考えられる症例 104
〔症例26〕 カルシウム拮抗薬とARBとの併用で良好な血圧調節が得られた症例 105

3.
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEインヒビター)

107
  薬理作用/利点/欠点/副作用/最近の動向
〔症例27〕 変換酵素阻害薬による咳嗽をはじめ、副作用が多く発現した症例 110
〔症例28〕 変換酵素阻害薬により喉頭浮腫を来した症例 111
〔症例29〕 ACEインヒビターが著効を呈したレニン産生浮腫(傍系球体細胞種) 113
〔症例30〕 ACEインヒビターを投与しショックとなった症例 117
〔症例31〕 消炎鎮痛薬投与によるACEインヒビターの降圧効果の減弱 119
〔症例32〕 ACEインヒビターおよびサイアザイド類似利尿薬により腎機能の悪化を来した症例 120

4.
降圧利尿薬

122
  サイアザイド系利尿薬/ループ利尿薬/アルドステロン拮抗薬(カリウム保持性利尿薬)/利尿薬とカルシウム代謝
〔症例33〕 サイアザイド利尿薬による痛風の発症例 125
〔症例34〕 利尿薬の副作用による高尿酸血症に対し、尿酸排泄促進薬を投与し痛風発作を発症した症例 126
〔症例35〕 グリチルリチン製剤と利尿薬併用による偽性アルドステロン症例 131
〔症例36〕 カルシウム拮抗薬・ARBの併用に加え、サイアザイド利尿薬を追加し良好な降圧が得られたものの、高尿酸血症を悪化させた奨励 135
〔症例37〕 利尿薬を強力なものに変更し、血圧調節が良好となった、難治性高血圧症例 137
〔症例38〕 過度の急激な降圧、特に強力な利尿薬の使用により、脳梗塞発症を助長したと考えられる症例 139
〔症例39〕 トラセミド(ルプラック)により高カリウム血症を来した症例 141

5.
β遮断薬(βブロッカー)

143
  薬理作用/副作用と投与時の注意/心不全に対する少量漸増療法/位置付け
〔症例40〕 β遮断薬により心不全を来した症例 146
〔症例41・42〕 β遮断薬投与により、冠血管攣縮を誘発したと考えられる症例 148
〔症例43〕 β遮断薬により悪夢を生じた症例 152
〔症例44〕 β遮断薬とジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の併用で良好な血圧調整が得られた若年男性の本態性高血圧症例 153
〔症例45〕 ISAを有するβ遮断薬により、筋攣縮を来した症例 154
〔症例46〕 β遮断薬により気管支炎による呼吸困難を悪化させた症例 156
〔症例47〕 妊婦に安全とされる薬剤を組み合わせて妊娠・出産に導いた高血圧症例 157

6.
α遮断薬(αブロッカー)

159
  副作用/位置付け/注意点
〔症例48〕 α遮断薬によるファーストドーズ・フェノミナンと思われる奨励 161

7.
中枢性交感神経抑制薬

163
  薬理作用/副作用/投与時の注意/利点
〔症例49〕 αメチルドバによる肝障害例 165
〔症例50〕 αメチルドバによる発熱 166

8.
ラウオルフィア製剤 167

9.
多剤併用 167
〔症例51〕 多剤併用による降圧により臓器障害が軽快し、予後が改善された悪性高血圧症例 167
第5章 早朝高血圧の治療

1.
早朝高血圧の病態 170

2.
早朝高血圧の治療についてのこれまでの報告 172
1. α遮断薬 172
2. 交感神経中枢抑制薬 172
3. 長時間作用型カルシウム拮抗薬 172
4. RA系阻害薬 173

3.
早朝高血圧の治療法−著者の考え− 174
〔症例52〕 早朝高血圧にアムロジピン就寝前追加投与が著効を呈した症例 179
〔症例53〕 早朝高血圧にアムロジピンの就寝前分割投与が著効を示した症例 180
〔症例54〕 早朝高血圧に就寝前のニフェジピン徐放剤(アダラートCR)追加投与が著効を呈した症例 181
〔症例55〕 早朝高血圧に対し、ARBを3種変更するも無効で、アゼルニジピンの就寝前投与が著効を呈した症例 183
〔症例56〕 早朝高血圧にドキサゾシン就寝前追加投与が著効を呈した症例 186
〔症例57〕 モーニング・サージにドキサゾシン(カルデナリン)の就寝前投与が著効を呈した症例 188
〔症例58〕 早朝高血圧にドキサゾシン就寝前投与が無効であった症例 190
〔症例59〕 ドキサゾシンの就寝前投与が無効であった早朝高血圧にグアンファシン(エスタリック)の就寝前投与が著効を呈した症例 191
〔症例60〕 早朝高血圧にテルミサルタン就寝前分割投与が有効であった症例 193
〔症例61〕 早朝高血圧に早朝排尿時のアダラートカプセル内服が著効を呈した症例 195
第6章 新しい薬剤の対する評価と使い方

1.
アルドステロン拮抗薬

198
  薬理作用/スピロノラクトンとエプレレノンの違い
〔症例62〕 スピロノラクトンが著効を呈した特発性アルドステロン症 202
〔症例63〕 エプレレノンが著効を呈した原発性アルドステロン症例 203
〔症例64〕 スピロノラクトンが著効を呈し、エプレレノンに変更したところ血圧の上昇を認めた原発性アルドステロン症例 204
〔症例65〕 スピロノラクトンからエプレレノンに変更したところ血圧が上昇した原発性アルドステロン症例 206
〔症例66〕 エプレレノン追加投与が降圧に著効を呈した症例 207
〔症例67〕 スピロノラクトンからエプレレノンに変更したところ血圧が上昇しカリウムも上昇した大動脈解離術後の難治性高血圧症 209

2.
ARB/サイアザイド合剤 212
〔症例68〕 カルシウム拮抗薬とARBの併用で降圧不十分で、ARBをARB/サイアザイド合剤に変更し良好な血圧調節が得られた症例 214
〔症例69〕 ARBとカルシウム拮抗薬併用で降圧不良の症例に、ARBをロサルタン/ヒドロクロロチアジド合剤(プレミネント)に変更したところ日中の過度の降圧を認めた症例 215
〔症例70〕 少量のサイアザイド利尿薬追加により尿酸値が上昇し、プレミネントに変更後低下した症例 216

3.
直接的レニン阻害剤 218
付録 主な降圧薬(2010年1月現在) 220
参考図書 236
索引 237


表9 主要降圧薬の積極的な適応と禁忌(著者)

降圧薬

積極的な適応

禁忌

慎重投与例
Ca拮抗薬 脳血管疾患後、狭心症、左室肥大、糖尿病、高齢者、徐脈(ジヒドロピリジン*1)、頻脈(ジルチアゼム) 房室ブロックU度以上、徐脈(40以下)(ジルチアゼム) 心不全、徐脈(50以下)(ジルチアゼム)、頻脈(ジヒドロピリジン*1
ARB 脳血管疾患後、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、腎障害、蛋白尿、糖尿病、メタボリックシンドローム、高齢者、心房細動予防 妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄 片側性腎動脈狭窄症
ACE阻害薬 脳血管疾患後、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、腎障害、蛋白尿、糖尿病、メタボリックシンドローム、高齢者、心房細動予防 妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄、血管神経性浮腫 片側性腎動脈狭窄症、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患
利尿薬 脳血管疾患後、心不全、腎不全(ループ利尿薬)、高齢者(少量のサイアザイド 痛風 妊娠、高尿酸血症、耐糖能異常
β遮断薬 狭心症*2、心筋梗塞後、頻脈、心不全*3 喘息、房室ブロックU度以上、高度洞性徐脈 房室ブロックT度、閉塞性肺疾患、末梢動脈疾患
α遮断薬 高脂血症、前立腺肥大 起立性低血圧  
*1 ただしアムロジピン、アゼルニジピンを除く
*2 ただし血管攣縮性狭心症には禁忌(著者追記)
*3 少量漸増療法を指す

図3 降圧薬の作用機序(元は図)

 β遮断薬でありながら弱い交感神経刺激作用を有する薬剤をISA(+)のβ遮断薬という。よってISA(+)のβ遮断薬は、その降圧機序に血管拡張作用を併せ持つ。心抑制作用はISA(−)のβ遮断薬に比し弱い。
 心臓のβレセプターはβ1レセプターである。

血圧  
||  

心拍出量
循環血漿量増加 アルドステン
塩分制限
利尿薬
心収縮力・心拍数 β遮断薬
中枢性交感神経抑制薬
×  

末梢血管抵抗
直接血管平滑筋を弛緩 Ca拮抗薬
ヒドララジン
PG.キニン(ACE阻害薬)
  中枢性交感神経抑制薬(交感神経節遮断薬)
交感神経α* α遮断薬
交感神経β2** β遮断薬(ISA+)
アンギオテンシンU(レニン・アンギオテンシン系) ATU受容体拮抗薬
ACE阻害薬
β遮断薬(ISA−)(レニンの抑制)
* αレセプター刺激で血管は収縮する。
** β2レセプター刺激で血管は拡張する。よってβ遮断薬投与により末梢血管抵抗は増加する。
ISA:内因性交感神経刺激作用
青字=抑制赤字=刺激


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